町家スケッチBOOKpage.10

妻籠
中山道の宿場町として栄えた妻籠は、町並保存の先駆的な活動をしている所としてもよく知られている。「凍結保存ではなく、住みながらの保存」「他の土地の人に売らない・貸さない・壊さない」「一つの家に一つのなりわい(併用しない)」などのルールのもとに整備され、道路にあった電柱も取り除かれて江戸時代の町並が再現されている。宿場町のため、旅人をより多く泊める必要があって2階建てが発達している。格子の意匠は荒いもの、繊細なもの、吹き寄せになっているものなど、さまざま。桝形のあたりには、江戸中期ごろの旅籠があり、緩い勾配の板葺きの屋根に押えの石が置かれている。内部は中央に土間が通っており、両側に部屋というより、床が張ってあるという感じ。その床の一部にいろりが切ってある。いまからわずか2〜300年前の旅人はこんな所で宿を取ったのだ。ほんとに、雨露をしのげて火があって床に寝られる、それだけの所。