町家のよさを生かす住まい方 ─中京区・白杉邸内田康博(京町家再生研究会幹事)
改修を思いたたれたきっかけは、ほぼ昔のままの状態で使われていたトイレやフロなど、水周りの給排水が詰まることが増え、以前から気になっていていた雨漏りのこともあり、そろそろしっかり直しておきたいと考えたとのことでした。縁あって、京町家作事組で改修を担当することになりました。 改修前の調査によると、部分的に雨漏りやシロアリの被害があるほか、トイレ・洗面・風呂の水周りの傷みがひどく、間取り上も使いにくいので、水周り部分はやりかえることとしました。渡り廊下を部屋内としたためトイレと洗面には窓がありませんが、広くトップライトを取り、とても明るい空間になりました。主屋は床や柱の傾きはそれほどなく、間取りもそのままとしました。トオリニワの土間のままの台所は冬はとても寒く、流しも古くなって使い勝手も悪かったので、床を上げてシステムキッチンを入れることにしました。その他の部屋は、椅子を使う部屋の床をフローリングにする以外はほぼもとのままで、一通りの壁の塗り替え、建具の補修などで面目を一新しています。 住まい手の白杉さんのお話をお伺いし、家の内部を見せていただいて、とてもすっきりと住まれていると感じました。押し入れや物入れなど、改修前から収納の多い町家でしたが、以前は雨漏りによる湿り気や、内部の棚の配置などのため、うまく活用できていなかったとのことでした。改修により雨漏りも気にならなくなり、湿気もとれ、有効に使えるようになりました。トオリニワの物入れの内部には食器が置きやすいように棚を作り直しました。パソコンを使ったりテレビを見たりすることの多い茶の間(1階中の間)の押入れにはテレビ用の棚やパソコンを使える机、本棚などが作りつけられ、小物が部屋にはみ出さないようになっています。その他の部屋も、もともとあった押入れの内部を作り直してクローゼットにするなど、使い勝手にあわせて改修することで、部屋をすっきりと使われているようでした。
現在はおひとりで住まわれているせいもあるかと思いますが、町家を町家らしくすっきりと住みこなすには、住まい方が大切だと感じさせられました。 冬の寒さについてお聞きすると、トオリニワの床を上げたキッチンには台所仕事をする部分に床暖房が入っていて、火袋の吹き抜けはそのままですが、真冬でもそれほど寒くは感じないとのことでした。 また、夏についても、2階は暑いけれども、1階ではほとんどクーラーを使わないで済んでいるとのことでした。お伺いしたのは8月初旬の暑い盛りでしたが、入口を一歩入るとヒンヤリと感じ、1階の奥の間には冷房が入っていませんが、それほど暑く感じませんでした。 使い勝手の上でも、夏冬の冷暖房のことでも、全く不都合は感じていないとおっしゃられていたのが印象的でした。そして、町家のよさをとてもよく生かしておられると感じました。町家を生かすには、住み手の考え方や住まい方やがとても大切であることを再認識させられました。 2006.9.1
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