店棟・玄関棟の復元と改修。そして、大学キャンパスに ―中京区・小島邸内田 康博(再生研究会幹事)
業務上の便宜のために長年の間にいたるところに手が加えられ、建物にとっては必ずしも適切とはいえない改修も多くあった。気になりながらも店舗があるため、手をつけることの出来なかった部分もすべて見直し、改修をされた。基本は建築当初の形を踏襲し、なおかつ現代の暮らしに必要な設備は整えることとされた。 まずファサードの部分に痕跡を残すのみであった平格子とばったり床机を復元し、2階のガラス窓は虫籠窓に戻された。中庭は床が張られトタンの屋根で覆われた部屋となっていたが、床を剥がし屋根を取り、元の庭に戻し、居住空間として、また建物の維持のためにも必要な採光と通風が確保された。通りに面した塀は板を新しくされた。表蔵の前には床が張られていたが撤去し、土間に戻し、二間続きのミセの間は当初は畳敷きであったと思われるが、今後の使い勝手を考えて土間とされた。また、屋根もすべて葺き替えられた。
改修に取りかかった時点では使い手は未定とお聞きしていたが、改修が進むうちに京都学園大学との縁が結ばれ、完成時には町家キャンパスとして活用される見通しとなった。長い歴史と深い文化を誇る京都の象徴の一つでもある祇園祭の鉾町の一角を担う小島邸を入り口として、学生たちは他にはない多くのことを感じ、学ぶことができるだろうと思われる。 |
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2008.5.1 |