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京町家再生研究会

路地の再生−整骨院と住まい−  下京区・岸本邸

内田康博(再生研幹事)
 新町通りを綾小路からすこし南に下がったところ、西向きの路地で今年の5月8日にオープンしたばかりの「しんまち整骨院」にお伺いし、お話をお聞きしました。
 オーナーで柔道整復師の岸本さんがこの路地の新たな大家さんとしてここに来られたのは5年程前のこと。元々ご近所の若宮通松原の材木屋さんのご出身で、一時北山に住まわれていましたが、近くで若宮接骨院を営まれていることもあり、こちらに住まいを移されたとのことです。
改修前
改修前(写真:末川協)
改修後
改修後

 この路地には新町通りに面する1軒の他、奥に5軒が並んでいます。そのうち一番手前の1軒が空き家となっていたので、2つ目の整骨院を開設することにされました。
 以前は弟さんが大工さんをされ、ご自宅の改修は弟さんが工事を行い、整骨院の改修にも取りかかっていましたが、体調を崩されたため一時中断していました。工事を引き継つぐ大工さんを探すうち、京都市景観・まちづくりセンターで京町家作事組を知り、相談されたのが昨年末のことでした。
 建物は総2階建て。間口3間弱、奥行き3間半で1列2室型。火袋はなく、ファサードは元々モルタルが塗られ、2階の庇が短く、窓の上に小庇が取り付く珍しい形式などから、昭和初期頃の築と思われます。
 1階の床は既に解体されていましたが元の畳の高さより少し下げて板張りとし、表を待合室、奥を施療室としています。土間のままだったハシリニワも同じ高さで板張りとし、事務スペース兼湯沸かし室としています。2階は畳敷きのままとし、患者さんがくつろげるスペースとして検討しているところとのことです。屋根瓦も葺き替え、傷んだ柱梁の補修とあわせて壁土も塗り直され、木部に刻まれた歴史を感じさせながら、すっきりと仕上がっています。

 ファサードはお隣のお祖母さんがお住まいの家もあわせて改修し、弟さんが改修された岸本さんのお住まいと連続して3軒が伝統的なデザインで改修され、古びて寂しげにも見えた路地の町並みが整い、生き生きと蘇りつつあります。

内観
内観(写真:末川協)

 オープンして間もない整骨院に訪れるのはご近所の方が多く、昔ながらの町家の風情を維持する空間はとても落ち着くと言われるとのこと。前栽はそれほど広くはありませんが植栽を施し、砂利を敷いて光と風を取り入れています。窓を少し開けるだけで表から裏に風が通りぬけ、こちらで働く柔道整復師さんも居心地が良いとのことです。
 これから京都市による路地の下水工事が行われる予定で、それにあわせてコンクリートの路面を石畳にすることを検討されているとのこと。もちろん石畳は自己負担となりますが、長く使うことを考えると意味のあることだと考えられているようです。
 こちらに常駐する柔道整復師さんは若い女性ですので、女性の方も安心して治療が受けられます。保険も使え、予約はありませんので、膝や肩など関節の痛みのある方は気軽に相談できそうです。

○しんまち整骨院  新町通り綾小路下ル船鉾町382 tel. 075-496-8485  
施術時間:午前 8:30〜13:00 (12:30最終受付)、 午後16:00〜20:00 (19:30最終受付)
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2009.7.1