素材にこだわる町家再生
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石貼り床のミセの間に置かれたソファ |
2階はギャラリー |
このサロンをつくられた本間さんご夫妻からお話をおききしました。ご主人は陶芸家で、このサロンに展示されている焼き物はすべてご主人の作品です。焼き物づくりについてお聞きすると、魯山人に大きな影響をうけた先生に師事されたことから、まず食から入るとのこと。器はあくまでも食べ物の着物で、主張しすぎてはいけない。そして、たとえば茶室に置いて違和感がなく、それでいて存在感のあるものを目指している。器は器だけで存在するものではなく、食器として使われてはじめて活き、部屋の空間のなかにおかれて全体と調和することが必要とのことでした。この町家のあらゆる空間の隅々にまで行き届いていると感じられる配慮は、器の制作とつながっていることがわかりました。
空間を考える上でまず考えたのが、表の土間に置かれる革張りのソファーでした。値段は張るけれどもどうしてもこれを置きたかったとのこと。このソファーの皮と鉄の質感にあわせて空間全体の素材が選択されました。土間床は天然石、木部はすべて無垢板、壁は土壁です。塗装は墨と弁柄を油で押さえ、襖には唐紙が使われています。合板やビニールクロスなどまがい物と感じられる素材は考えられなかったとのことでした。
奥さまはこちらでフラワーアレンジメントの教室を開かれています。空間の要所に配置された生け花や鉢植えは奥さまの作品で、空間を華やかに彩っています。
この町家は借家で、昨年の末からお借りして改修に取りかかりました。瓦や表の格子、柱梁の基本的な補修は大家さんが済ませていましたが、内装は借り手の担当でした。大工さんその他の専門知識と技術が必要な部分は山内工務店さんに、設計は末川協氏にお願いしましたが、壁合板の撤去、土壁の塗り替え、古色塗りなど自分たちで出来るところは自分たちでやりました。やってみることで自然素材と伝統技法の良さがわかったとのこと。壁土はもちろん、壁下地の竹子舞も、襖の唐紙も再利用ができます。土壁の下地にボードを使うと解体時にはゴミとなりますし、唐紙は一度合板に接着剤で貼ってしまうと再利用が出来ません。それだけでなく、やはり表情も本物とちがうことが、比べるとわかります。
こだわりの深煎りコーヒーをいただくと、とても良い香りが印象的でした。サロンの名をつけたのは、どなたでも気楽に立ち寄っていただき、くつろいでいただくためとのこと。本間さんご夫妻のこころのこもった空間を、どうぞみなさまもゆっくりお楽しみください。
三吉坊 釜座サロン 営業時間10:00-17:00 木曜定休(祝日の場合は営業) 振替休日、臨時休業あり 中京区釜座通り丸太町下ル桝屋町148-1 Tel. 075-255-9168 |
2011.1.1