下京・Wd邸梶山秀一郎(作事組理事長)
設計者のコメント 表屋造りの当町家は住居棟がダイドコとハナレで構成されていたが、相談を受けた時は、ハナレ他は改築して住宅を建て、そちらに住んでおられた。町家の方はゲンカンとダイドコを接客スペースに、ミセ、2階の厨子を含むその他は収納スペースとして利用されておられた。 当町家は表構えが1階の繊細な欄間付親子格子出格子とがっしりした無双格子、2階のお茶屋風の格子で構成され、独特な雰囲気をはなっていて、前を通る度に気になる存在であった。相談を受けて調査してみると、住居棟は江戸時代の特徴である細い架構材で組まれていて、元治元年に焼けてから明治までの間に建て替えられたもののように見える。 故障状態はミセ棟は2階床組の人見、胴差、ササラの殆んどと表の框が蟻害で全交換が必要であったことと、屋根の重みで桁が外側へ広がり、梁が外れかかっていた。住居棟はハシリニワの桁や母屋が断面不足で折れていて、ダイドコを含めて不同沈下が大きかった。また、一部を除き屋根は百数十年を経ていて、葺替えの必要があった。改修工事で特に困難であったのは、ミセ棟の屋根瓦を載せたまま2階床組をそっくり入れ替えることと住居棟の建ち歪みが複雑なため、どこまでで歪み突きを止めるかと云う判断であった。 改修の相談をさせていただいている間に作事組の事務局としてお借りすることになり、町家の再生と利用の再生が同時に行えることになった。
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