ウラニワを内部化して、家のひろば(=ユーティリティ・勝手口)に ──九条Nm邸設計・アトリエRYO/施工・活タ井杢工務店 ○改修のポイント 東寺の西側九条通から、御土居通を北に上がると、路地の手前にNm邸がある。明治44年の棟札が残る大塀造2列4室の大きな町家である。表に門屋と乾(いぬい)蔵を構え、主屋の間に前庭をとり、裏に前栽、渡廊下、納屋とオオウラという空地を備えている。間口5間ムシコ2階の外観からは、一見、健康そうな家に見えたが、床下や天井裏を調べてみると礎石や束石の不同沈下、二重構造になった造作柱のズレ落ちや歪み、ハシリニワの通し柱が根腐れしており、根本的な構造改修が必要となった。特に、広縁の化粧桁のねじれやたわみが大きく、伝統的なヌレ縁を、ガラス戸を入れて内部化するため、ハネ木のやり直しと敷鴨居の取付けにベテラン棟梁の高度な技と労力が要求された。
施主の希望は、改修して30年程たったキッチン、風呂、便所を明るく暖かくして、高齢化した両親と3人の子供たちが3世代同居して、快適に暮らせるようにしたいとの事である。そのためにまず、間口1間半の玄関ニワから、直接ハシリニワへ入ることをやめ、壁・天井の合板を破って、火袋の十字梁のあらわれた明るいダイニングキッチンを家の中心にする。リビングにするだいどころ境の建具を外すと共に、土壁に円窓を開け、L-D-Kの空間を一体化させる。更に、ウラニワへ続く土間の床を上げ、ガラス屋根を架けて、ダイニングキッチンからユーティリティ、勝手口へと床暖房土タイル貼の空間を、段差なく連続させて、家族全員が裸足で楽しめる家の多目的なひろばをつくる。2階には、厨子部屋も利用して子供室を3室新設し、座敷を若夫婦の寝室とし、階段ホールに化粧室を付け加えた。
東側の欄干のついた縁側には、軒簾を吊り、裏側の3階建隣家からのプライバシーを確保したが、昔はここから東寺の五重塔や森、東山の景観を楽しむことが出来たという。 2005.7.1
木下龍一(作事組理事) |