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京町家作事組

公的ファンドを利用した京町家改修 ──中京区・Ni邸


設計・クカニア/施工・山内工務店


外観(左:改修前/右:改修後) 下屋が下がっていたので、瓦も含めて改修した。2階に雨戸を取り付け、メーター、室外機等は格子で覆った。

◎改修のポイント
 三条の猪熊通下ル東側に建つ間口3.5間、奥行6.0間の建物を改修したのがサロン三条猪熊(仮)である。改修前は奥庭に戦後の一世を風靡したプレハブ住宅ミゼットハウスが建てられていた。この京町家は、施主の親戚が所有されていたが、東京に移り住んで空家になっていたので、平成17年に買い求めた。建設時期は明治23年で、数回の改修跡があったが、シロアリに食われることもなく、大屋根の瓦を葺き替えする必要がないほどに建物の損傷は無かった。

 この京町家の改修の目的は、京町家を活かし、食育を中心としたサロンとしての活用を図るためである。従って、キッチンスペースの改修が第一のテーマであった。施主は、作事組が過去に改修した町家(建田邸や山田邸)を見学して、このキッチンの使い方に長い検討時間をとった。その結果、イタリアンタイルに床暖房を施すスタイルとした。

キッチン(左:改修前/右:改修後) 火袋はふさがれており、復元した。トップライトを増やし、明るい空間とした。高窓はロープ操作により、下から開閉できるようにし、通風を取りやすい配慮をした。

 次に2階の座敷の使い方が重要なテーマとなった。様々なイベントが開催できるよう、縁側(5畳)を舞台に見立て、2部屋(8畳+6畳)を開放して都合19畳大の空間を確保した。また、イベント時に必要なトイレと洗面室を設置した。この時に検討が必要になったことが、階段の勾配である。既存の階段のままだと、使いにくく危ないということで、2階の一部の床を上げ、緩勾配の階段に直した(玄関に撤去した箱階段を設置している)。
 これで、市民に開放できる町家のスペースができた。
 1階の座敷は、プライベート空間、中の間は、半プライベート空間とした。1階にもユーティリティスペースが必要であり、洗面、浴室、トイレを設置した。玄関の間は中の間と続けて、小イベントスペースとしての利用が可能なように配慮した。照明の配置を考え、気軽な展示場としての活用も考えている。
 研究熱心な施主の改修希望項目は、(1)高齢者対応をおこなう、(2)住まいゾーンと開放ゾーンを区切る、(3)快適な生活を確保する、の3点であった。
 それに対して、(1)については、バリアフリー化を行い水場廻りの空間のゆとりをもたせることとし、(2)については、住まいゾーンと開放ゾーンにセキュリティーを設け、住人が不在の時でも人々に開放可能とした。また(3)の点についても、
・火袋を復活し、トップライトを設け明るくする
・座敷、キッチンに床暖房を設ける
・ミセの間、格子の内側の障子にプラスし、元々あった、内雨戸をアクリルの新設框戸と取替え、寒さ対策とする
ということで解決を図った。
 この改修物件は、京都市・景観まちづくりセンターのファンド(京町家まちづくりファンド事業助成金)第1号として助成を受けた。食育活動だけでなく、文化イベントや一般市民の祭事利用空間として、多くの市民に使われることが大いに期待される。

ダイドコ(左:改修前/右:改修後) ダイドコは掘り炬燵を設けた。キッチンとの間の建具を引き込みにし、料理教室のときに広々と使えるように考えた。

庭(改修前)   庭(改修後)

玄関(改修前)

玄関(改修後)
   
野間 文夫(作事組理事)
2007.3.1