町家の修復と修景─上京区・My邸設計・末川協建築設計事務所/施工・山内工務店
2008年の秋、町家の宿「胡乱座」の御当主より作事組の紹介があり、若いご夫婦から町家の購入、改修についてのご相談があった。河原町丸太町の新三本木、かつての遊郭の町割りが鴨川の西岸に残る一角である。調査に伺った町家は総2階にされたモルタル大壁の看板建築であったが、もとの町家もそれほど傷んでおらず、在来工法での工事も比較的良い仕事で、今後も十分に手入れできると判断できた。夫君はいずれ町家の1階部分でカフェを開かれる夢をお持ちであった。2009年の年明けに購入を果たされ、改修が実現した。 計画の内容は、町家の外観を取り戻すこと、ミセニワをもとの広さに戻し、階段を付け替えて入り口を広げること、営業に関わらず人の集う家にするため2階だけでの生活ができる設備を設けること、2階の増築の際に狭められていた火袋をもとに戻すこと等である。1階の座敷やハシリニワはそのまま直し、もとの内部の建具はすべて再利用することも決まった。小さなダイドコの収納式カウンターや台目の小部屋の小さな障子窓のアイデアも頂けた。柱の揚げ前、根継の必要箇所は今回1、2階別々に確認が要る。
お施主の夫君は、二期にわたる工事を「町家そのものとそれを直すことを学びながら実現できた改修」と振り返る。その経験から「京都で町家に暮らすことは憧れではなく一つのしっかりした選択肢だと友人達にも伝えています」。一期工事の竣工時には遠方の現場に出張中だった妻君も、今回は子育てしながら工事を迎えられ「暮らしながらの工事は大変だったけど、毎日の進捗も楽しみで、職方との打合せに常に関われたことも有意義でした」。オクドや人研のハシリを活かしたカフェの開業も現実の選択肢となります日を祈念します。 末川 協(作事組理事)
2010.9.1 |