路地奥町家の改修——2戸を1戸に設計・内田建築設計事務所/施工・山内工務店
◎建物の現況 4メートル幅の路地の奥、2メートルに狭まった路地の西側に2軒の町家が並んで建っている。それぞれ間口が奥行きよりも広く、北の棟は更に奥行きが狭くなっている。南の棟は明治の終わり頃の築とおもわれ、北の棟からは昭和10年の棟札がみつかった。北のほうが階高が24センチ程高く、屋根は階高の低い南の棟と一体化しつつ流れの方向を90度変えるなど、複雑な造りとなっている。北の棟は当初から外壁や軒裏がモルタルで覆われ、同時期に南の棟もモルタルで覆ったと思われる。現時点では雨漏りはなかったが、共用の井戸があったと思われる流し周辺と路地側の柱が大きく下がり、最大17センチ沈下していた。壁や柱は合板で覆われ、傷みが確認できなかったが、解体してみると案の定、柱の根元は半数以上腐り、2軒の境で大屋根からの雨水が集中するところにある通し柱は1階の庇との取り合い部分に特に腐朽が見られた。
◎改修の方針 2戸を1戸としたが、現況を生かしてローコストに抑えるため、出入口や外壁開口部など位置を変えず、修理して使用することとした。外壁と軒裏のモルタルはできるかぎり落とし、土壁と木板に復元した。火袋が塞がれて狭くて暗い流しは道に面する部屋に移動してダイニングキッチンとし、火袋は天窓とあわせて復元した。2階は2戸をつなぐ出入口を開けるのみで間取りは変更なしとした。トイレは2ヶ所あるが、将来の2世帯での暮らしを見込んで両方残し、排水のやり変えプラスアルファにとどめている。風呂は脱衣とあわせて作りなおした。最大17センチの揚げ前と歪み付き、柱の根継ぎとひとつ石、カズラ石の据え直しを行い、大きく傷んでいた通し柱は抜き替えるのは困難とみて、添え柱で補った。 コストダウンのため、一部の部屋は御施主様ご夫妻自ら中塗仕上げをされた。家のことに関心のなかった夫が家についていろいろ考えるようになったと奥様から喜びの声をいただいた。6月初めには無事引っ越しを終え、2人の息子さんたちは工事中から仲良くなっていた近所の子供たちと早速路地を走り回っている。 内田康博(作事組理事)
2012.7.1 |