お風呂棟の改修工事ーー北区 F邸設計:冨家建築設計事務所/施工:熊倉工務店
母屋縁側から濡縁に続いて外部となり手前にお風呂、奥に便所と並んでいましたが、これでは便所に行くには必ず外部の濡縁を通っていかなくてはならない間取りでした。また浴室洗場からすぐに縁側につながり、洗面脱衣室は縁側の端となって特に間取り分けされたわけではない状態でした。 外に出ず外気に触れずに便所に行くにはどのようにしたらよいか、また濡縁の庭に面した風情はどの様に残すか、脱衣室をどの世に設けるかの3つが課題となりました。 縁側に面した母屋側から脱衣室と便所の入口を並べることによって、それぞれ屋内から各室に行けるように配置すると、縁側突当りが洗面台で塞がっていたのですが、ここが開放されて、勝手口として妻戸を入れて出入りできるようになりました。また濡縁から見える外壁面と建具はそのまま残してその内側に便所と風呂を配置しました。便所は濡縁側の壁の保全を優先したために、壁面に開口部が取れない状態となったので、天窓を設け機械排気で換気する選択となりました。壁に窓がないのですが明るい便所となりました。またお風呂の方は濡縁側にみえる元々の便所の建具を開けると浴室の窓が現れ覗けるように配置しているのでお風呂から奥庭が見られるようになりました。これによって濡縁側のイメージを触ることなく壁の向こう側で改修工事が進められました。お風呂はユニットバスではなく在来のお風呂でTOTOのネオマーブバスの浴槽を入れて100角の真っ白の磁器タイルを使い、腰下タイル貼り上部と天井を桧板貼りのすっきりとした意匠の浴室としました。木部が多いためカビ・腐朽菌や壁体内結露対策などに配慮して、通風が良く取れるように開口を配置しました。窓は庭に面した側とその反対面に高さを変えて窓を設け脱衣室との出入り口を通って脱衣室側の窓、縁側との出入り口、縁側の勝手口と通風経路を非常に多く取り、風の抜ける配置としました。また同様に通風については壁体内、小屋裏も同様に配慮しています。 高断熱、高気密とは逆行しているような考えではありますが、木と土を使った建物で材料の健全性の維持には建材に呼吸させるということが重要なことだと信じています。 補修に留めた濡縁側を除いて外壁面は漆喰塗り、木部は古色塗を止めて白木で新たに建直しています。母屋の古色塗された重厚な雰囲気とは変わって明るい清々しい雰囲気が出せたと思います。 冨家裕久(京町家作事組理事)
2014.3.1 |