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京町家作事組

協働事例ー『京町家再考』プロジェクト


 2015年10月24日(土)午後、上京区中務町(智恵光院丸太町近辺)の町家にて改修工事後のオープンハウスを開催しました。既に商談が入っている物件にもかかわらず、当日の来場は20組以上と大盛況な現場となりました。

 今回のプロジェクトは作事組さんと八清との初の共同プロジェクトとなりました。実現するまでには相当な苦労が互いにあり、それぞれに考え方や捉え方が違う中で何度も合同勉強会を重ねて意見交換をし、そして互いに信頼を持ってプロジェクトを始動させることができました。常に前向きに動いてくださった作事組関係者各位には大変感謝しております。

 既に報告がありました通り(第103号)、改修工事途中には、一般の方々を募って「土壁ワークショップ」の開催も行いました。告知方法には現代風に【Facebook】のみを活用しましたが、募集した当日には参加締切をしたほどの盛況ぶりな反響でした。『本物に触れる』そんな貴重な経験のできる、良い機会に恵まれたと思います。

 今回この執筆を行うにあたり、このプロジェクトを担当した私目線=不動産業目線でのコメントを少し書かせていただきます。

 わたくし共が町家を扱う大前提として、町家保存・再生を第一に流通を中心に考えています。もちろん、町家保存・再生については作事組さんも同じ考えだと思います。町家を流通させるには、売れる町家を創る事が大事です。これは決して、無責任に見た目だけを良くして「とりあえず住める」町家を創ることでは無いと思っています。既に100年近い家歴を持った建物を、この先50年、100年、200年と住み継ぐ為に、後々仕上げによって見えなくなってしまう躯体部分の安全性を保ち、安心して快適に住んでもらうことが必須です。そのために、相当なコストをかけて改修工事をしています。また町家を売る場合にファイナンスも重要な役割を占めます。ファイナンスが利用できるかどうか、味方につけれるかどうか、が非常に重要であり、この部分を開拓するのが大変苦労のいるところです。一般的に築年数の相当経過した建物については資産価値を見出すことが難しく、担保評価を上げる為の努力が必要となります。京都に本拠地を置く金融機関への働きかけをし、町家への理解と必要性をアピールし、世の中のニーズに合った金融商品作りを開拓することに成功しました。ファイナンスがつくことで、飛躍的に流通が良くなったことは事実です。

 今でも日々どんどん町家が潰される状況があり、維持することすらできないのが現状です。わたくし共が普段扱う町家は、歴史のある重要文化財級の町家という訳ではありません。元々借家建だったような町家や、一般の方々が住んだり商売をされていたような大衆的な町家ばかりです。しかしながら、そのような町家が大半であり、暮らし・生活して住み継がれているのだと思います。(もちろん、重要文化財も扱いたいです!)

 町家をもっと流通させるためには、町家の敷居を下げ、身近に感じてもらえる町家=売れる町家を創ることが大事だと思っています。そして、その家を愛し、愛着を持って住んで頂けるお客さんを見つけること。その後のアフターメンテナンスまでを管理すること。それが不動産業だからこそできる町家保存へのアプローチだと思います。

 請負工事とは違い、ほとんどが八清で購入した町家を先に改修し、改修後にその町家を販売することになりますので、改修段階では施主の顔が見えない状況です。ですので、事前のリサーチやプロジェクトの企画内容については相当に吟味が必要となります。現代の多様化したニーズに合わせて、改修内容も柔軟性のあるものが求められます。不動産流通業だからこその視点で、今後も少しでも町家保存・再生に力を注ぐことができればと思っております。

 今回のプロジェクトを通して、作事組さんと一緒にお仕事をさせていただけたことに大変感謝しております。私自身の知識向上だけでなく、八清全体として町家への考えを改めて話合う機会が持てましたし、またパワーアップすることが出来たと思っております。これを機に、益々一緒にお仕事をさせていただければ非常に嬉しい限りです。

 最後になりましたが、今回多大なる協力をいただきました、施工:大下工務店様、設計:クカニア様はじめ、全面的にバックアップくださいました京町家作事組理事会様、この場をお借りしましてお礼申し上げます。

株式会社八清 暮らし企画部 浜田真以子

2016.1.1