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京町家作事組

京町家のオフィス −らくたび京町家


 千年の都「京都」の歴史文化の魅力を伝えるために創業した2006年から、いつかは京町家にオフィスを構えて京都の情報を発信したい!と思い続けていた中で、2010年6月、初めてオフィスを京町家に移して四条京町家での活動が始まりました。しかし、こちらの京町家が2014年12月で使用が難しくなり、オフィスの引っ越しを行わないといけない状況となりました。できれば移転先の次のオフィスも京町家であれば・・・とは思いながらも、タイミング良くオフィスとなる京町家と出会う機会はなかなか無いかもしれない・・・と半ば諦めながらも、新しい京町家との出会いを求めて京町家情報センターに登録しました。

 さて、京町家情報センターから届く京町家の情報誌を見ている中で、ある物件に興味を持って問い合わせたところ、それとは別の物件でしたが、素敵な京町家がまもなく空きそうですよ、と教えていただきました。その京町家こそ現在、本社としている旧村西家住宅(らくたび京町家/中京区蛸薬師通高倉西入泉正寺町)であり、運命の糸に導かれたかのように、オーナー様とは以前より弊社の京都学講座や現地散策ツアーにご参加をいただいていたことから既にご縁があり、仲介をいただいた不動産会社の社長様も以前に京都の地名に関する講演を聞いていただいていたご縁があり、偶然どちらにもご縁があったという、奇跡のようなご縁によって現在の京町家を本社とすることになりました。

 現在、らくたび京町家は、スタッフ一同のオフィスでもあり、また大座敷や茶室などは茶会やイベントの会場として大いに活用しています。例えば、毎月開催している茶会は、あまり作法を気にすること無く、とにかく京町家のしつらえを見て、おいしい和菓子をいただいて、ゆるりと季節を感じていただきたいという想いから「四季ゆるり茶会」と名付けて開催しています。今夏の猛暑の日に開催した「名水ゆるり茶会」では、京都が誇る歴史的な名水を各地から汲んできて、名水の歴史ミニ講座で学んだ上で名水を飲み比べて、その名水でお茶を点てました。また、旅行会社と提携して修学旅行向けのプログラムのひとつとして茶道体験も行っており、風情あふれる京町家の空間で抹茶と和菓子をいただくのみならず、各生徒の皆さん全員に茶碗と茶筌を準備して、茶道の先生のわかりやすい指導を受けて、自ら茶人としてお茶を点てるという体験も実施しています。

 また、京町家では様々な年中行事も執り行い、3月の上巳の節句には“雛飾り”を、5月の端午の節句には玄関屋根から邪気を祓う菖蒲を垂らす“軒菖蒲”などを毎年行い、京都が大好きな人びとが集う弊社の会員組織(らくたび会員)の皆さまと一緒に豊かな季節の移ろいを楽しんでいます。その他にも、京町家イベントとして毎年、夏には流しそうめん、迎春準備で賑わう師走にはお餅つきを行い、また中秋の名月には観月の宴を催して月見酒をいただくイベントを開催したり、ある時は出張回転寿司をお願いして京町家の大座敷に組み立てた回転寿司レーンが突如現れ、寿司職人がにぎった絶品の寿司がクルクルと座敷上を回るという大人気イベントなども開催するなど、いつも京町家の空間には賑わいが絶えません。

 弊社では2017年4月より、もう1軒、洛北紫野の禅寺・大徳寺の北東に位置する旧荒川家住宅(らくたび京町家紫野別邸/北区紫竹西高縄町)の活用も開始させていただきました。こちらも京町家居住支援者会議の皆さまからご紹介をいただきまして、黒タイルが輝くおくどさんにひと目ぼれをして、良いご縁となりました。2018年1月より、らくたび京町家紫野別邸を事業所として本格稼働するとともに、おくどさんを活用した食文化の継承などにも尽力していきたいと考えています。

 京町家は建物そのものを維持保存することも大切ですが、京町家という空間で受け継がれてきた食文化や年中行事など京都の暮らし(生活文化)も同時に、同空間に受け継がれていくことが大切と考え、今後は年々、近代化・国際化する暮らしの中で、京都が誇る生活文化を受け継ぐことがより重要になってくると思っています。

若村 亮(らくたび代表取締役)

2018.1.1