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京町家作事組

糸の道に開けた丁字交差点の町家―Nk邸


設計:中村設計 / 施工:大下工務店

 2016年7月にご相談のあった町家は当時より更に2年ほど前に潟nチセさんの紹介物件でNk氏がご購入された1列3室型の町家であった。関東にてお仕事をなされていたNk氏は奥様とお子様の3人家族、ご実家が関西とのことでか ねてより関西に戻られる計画をされていた。そしてご相談から約2年後となるお子様の小学校進学に合わせていよいよ改修の計画がはじまった。

 二条小川近くにある町家は2m程度の幅のT字道のちょうど真ん中、小川通りと西洞院を繋ぐ道の両側の家はすべて町家であった。ご近所さんによると昔は糸屋関係の職人が分業制で隣の家から隣の家へと作業を流していくシステムであったようで、内装の解体後に分かったことで2階のオモテの間の側壁に敷鴨居があり、どうやら行き来ができたらしい。ちなみに、ご購入前の用途は服飾教室であったようで看板が残っていた。

 調査に入らせて頂くと例によって内装はほとんど合板に覆われていて間仕切りや土壁もほとんどが抜かれていた。なにより前栽には2階建てのコテコテの増築がなされていた。しかし、屋根はご購入前に葺き替えられていた様子で雨漏りは無かった。構造改修については土壁の復旧はあるものの、柱の揚前は大きくて40程度でイガミ突きはなく、比較的健全であった。

 さて、設計ではまず構造改修のご説明をするとともに何より購入時よりも面積を縮めることになる増築部の解体撤去をNk氏に説明した。構造の健全化や採光や通風など生活環境の改善をお伝えし、増築部は撤去することになった。床面積を減らす決断とご理解を頂けたNk氏に感謝します。普段は関東ご在住なので京都に打ち合わせにこられた際には1日設計の打ち合わせをすることもあった。一度だけ私が東京に行って打ち合わせをした、丸の内で仕事をしたのはちょっとした思い出である。

 当初、お子様の進学に合わせ工事を予定していたが、8月にNk氏の大阪への転勤がちょうど決まり予定よりも早く工事に掛かることとなった。当初心配していた工事中の打ち合わせの頻度は京都に仮引越しをされることとなり無くなった。


解体


 解体着手後、ハシリの土間コンを撤去していると埋められていない井戸が発見された、そして当初よりNk氏が心配されていたお座敷の下の土の陥没、これは今の町家以前にあった井戸の跡であると推測、これ以上下がることはないものの安全を見て砕石と転圧をかけた。工事打ち合わせにはお子様も一緒に来られ、大工さんや左官屋さんが仕事をしている姿を見て「何してるの〜」と言った様子で楽しそうに見ていた。町家の仕事に興味をもってくれたらうれしい限りである。

 果たして今年の2月に工事は完了し、お引越しをされた。工事中には井戸埋めなどの追加工事や工期の延長にご理解とご協力を頂けたNk氏には重ねて感謝したい。

 京都での新生活やお子様の成長に町家の改修でお手伝いできたことをうれしく思う。

2階に懸垂器を設けました

天窓

1階表のキッチン
<井澤弘隆(京町家作事組)>

2018.5.1