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京町家作事組
京町家の技術 その一

京町家大工の棟梁
荒木正亘(アラキ工務店) 


 私は親父の代からの町場の工務店をやっています。京都の町は戦争でほとんど潰れなかったので、私ら町場の工務店はメンテナンスが主だったんです。たまに新築を手掛けても、離れが古くなったから建て替えようという感じでね。得意先は限定されていて、借家を三、四十軒持っているような御店(おたな)を得意先にして、「ここの御店には職人3人が一年中仕事をしている」「あっこの御店には職人4人……」というかたちでした。昔は物干しも水回りも木ですから、御店の主屋も直せば借家も直すということで、メンテだけで一年中仕事があったわけです。

 それから、今で言うボランティア仕事もたくさんありました。私が丁稚奉公に行った所が中京のど真ん中にあったものですから、祇園祭の時期になると、町内に提灯を立てて回るとか、鉾を組み立てるとか、大工たちはみんな仕事を放ってやってましたね。今だったら「私はボランティアやってます」と肩張って言いますが、昔はそれが当たり前だったわけです。そんな風に育ったもので、その延長で私もいろいろとボランティアをさせてもらってます。

 私はね、職人というのは技術的にいい仕事ができるのが職人と思っているんです。しかし、棟梁というのは、また違うんですね。技術はもちろんですが、ある程度コーディネートができて、提案能力もあって、説得力がある、というのが棟梁です。 今年の4月に大工や左官などの職方や建築家が30人以上が集まって「京町家作事組」という組織を発足させたんです。作事というのは昔の言葉で家の修繕や建築をさす言葉です。町家を直したいが誰に頼んだらいいか分からないというときの相談窓口みたいな感じですが、町家のユーザーには「京町家友の会」に入ってもらい、「作事組」はその仕事に合った職方の紹介や見積り、工事の進捗管理、最終検査をやる、というものです。ユーザーにも京町家について勉強してもらわなければなりませんが、我々職方も結束して研鑽せんとあかんということです。

(『ねっとわーく京都』1999年8月号掲載の座談会より構成)