作事組  東奥 宏幸 (京の名工)
「間入れ表替え」
平成20年12月
京都市中京区
約8分30秒
監修 京町家作事組
設計 クカニア
施工 アラキ工務店
畳  東奥畳店 前本康宏 久保直樹

【表替え】 Omotegae
表面に見えている畳表を新しい表に替える事をいいます。

【間入れ表替え】 Maire-Omotegae 
京町家の改修工事では、修繕前と後では部屋の寸法が大きく変わっていることがしばしばあります。なのでその部屋から引上げておいた畳にも関わらず寸法が大きく違っていたりします。作業としては、新調の畳製作と同様に部屋の採寸を行い、引上げておいた畳の寸法から新規の寸法に合わせるため床を大幅に切ったり、出したりします。畳の土台となる畳床に隙間を埋めるため、切ったゴザを縫いつけます。また、箪笥を置いたことによる凹みやよく踏まれる箇所の凹み (ムラ)がある場合、藁またはゴザ等を床に縫いつけてムラをなくす作業を行います。 100年以上経過しているものも多くあります。

○ 100年以上経過した床を再利用する意味。(手縫い床に限る)
畳床というものは、乾燥させた稲藁を機械圧縮し、機械逢着して厚さ 5[cm]程度の板状に加工したものが最も一般的なもので「藁床」といいます。お米の副産物として生じる稲藁を有効活用したもので、適度な弾力性、保温性を有し、室内の調湿作用や空気浄化作用など高い機能をもちます。100年以上経過した床も稲藁でできているのですが、現在の藁床との違いは「機械逢着」ではなく「手縫い」で床が作られている点です。手縫い床というのは、絶妙な藁の配置や組み方が施されムラができにくいものになっています。ムラのできにくさでいうと現在の藁床よりも優れています。(手縫い床の等級にもよります)しかし、手縫い床は藁の配置や縫った糸を締めていく作業が難しく並大抵ならぬ労力を要します。なので機械床が普及した現在、手縫い床を作れる職人さんは日本全国で1〜2人ともいわれています。京都は幸い戦火を逃れ、手縫い床が比較的多く現存しています。しかし、家の建替え等によってそのような畳も減ってきているのも事実。今では、ほとんど新しく作られない手縫い床の存在や、先人の手縫い床造りの技術を後世に伝えていくためにも手縫い床はできる限り再利用していきたいと思っております。

金槌 手当 相引 待針 包丁(関西) 分当り