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京町家作事組
第86号(2014年11月)

◎10月の報告

4日(土) 町家でトーク 釜座町町家見学
9日(木) 京都工業繊維大学 建築史グループ研究 釜座町町家見学
10日(金) 理事会
11日(土)
12日(日)
第4回作全協総会in宮津
18日(土) 斧屋法要
19日(日) NPO国際文化美術協会留学生 釜座町町家見学
24日(金) 理事会
24日(金) 日本都市学会 釜座町町家見学
31日(金) インドネシア文化財保護実務者 釜座町町家見学
31日(金) 第2回作事委員会

◎11月の予定

1日(土) 京町家再生セミナー「修復から学ぶ町家のつくり」
14日(金) 理事会
15日(土) 京町家再生セミナー「町家改修の進め方」
28日(金) 理事会

[第4回作事組全国協議会総会]

作全協総会

作全協総会
 第4回作事組全国協議会総会・シンポジュームが、会員10団体を含む21団体、スタッフを含む総勢83名の参加を得て、宮津で開催された。

 総会に続き宮津町家について、城下町、北前船の廻船や地場産品の集散で栄えた町の歴史や緒に就いた町家再生についての説明がなされた。引き続き町の資産や町家の状況を実見したうえで、分科会の意見交換につなげる趣旨で、分科会ごとに設定された街歩きコースを経て分科会に望んだ。分科会の様子は各会の報告に譲るとして、分科会の意見交換から、伝統技術の再生という作全協の中心テーマの他、各地の活動の歴史や熟度はそれぞれでも、少子高齢化、地場産業の衰退、空き町家の増加などの共通の問題があぶりだされ、併せて住民に町家への理解を促すためにも、地域住民を巻き込んだ活動の重要性が認識された。本総会の日程を決めた理由のイベント「みやづ港アートフェスタin和(やわら)火(び)」は市民組織が費用の寄付を募り、城下町ゆえに多く存する寺とその檀家を中心に始められ、8年の間にイベントの範囲が町家などの他の場に広がってきたということで、町の特性を生かした住民活動の試みとして示唆するものがある。

 エクスカーションでは伊根の舟屋と加悦のちりめん街道を回ったが、漁業、養蚕やちりめんなどの産業ごとに異なる形式の伝統家屋を抱え、埋蔵量の多さと町家に限定されない彩を感じた。

 天橋作事組の行政を巻き込んでの本会の開催と運営、閉会式での2年後の姫路までに宮津の民家型を明らかにするという決意表明など、本会開催目的の一つである、地元の応援隊という役割は一定程度果たせたかと思う。姫路での再会とその間の各地の成果の持ち寄りを期待したい。

第T分科会

カトリック宮津教会

ちりめん街道

伊根舟屋見学クルーズ
 会場の今林家まで、カトリック教会の陰に隠れている聖アンデレ教会、改修を待ちわびるコルビジェ風の市役所、唯一残るとされる武家屋敷、城門や長屋門、カトリック教会、和気宮神社、京街道沿いにびっしり並んだ町家が都計道路の拡幅で一掃された中でかろうじて残った洋館建ての病院及び改修活用事例の桜山長屋と見学して廻り、和火(やわらび)イベントに協賛して山車が展示された桜山天満宮を抜けてたどり着いた。

 分科会のテーマは「町家活用と再生手法」であり、まず八女福島の取り組みが中島さんからPP.を使って報告され、町家の救済や利活用のための資金調達やテナント探しをするために、市民、行政、専門家ごとの組織と協働のしくみを作って取り組んでいる、とのことであった。見学を通した宮津の感想を求められ、出席者からの回答は、地蔵の祠がよく手入れされていて生活感が感じられた、外に開かれた感じの町、市民による保存運動に感心した、などであった。次いで各地の取り組みが紹介されたが、姫路(坂之上氏)からはサロンやコンサート会場などの利用について報告がなされた。加悦(上田氏)からは町家が生活空間であることを尊重している(観光地ではない)が、少子高齢化もあって空き家やその予備軍が多い、旧丹後銀行の保存でNPOを立ち上げたが、八女に比べ行政の熟度が低く期待できないということであった。川越(野本氏)からは一番街商店街の景観を中心に活動、生活の場であることを基本に(観光目的は前面化しない)、街並み規範を作ったこと(街並み、建築、看板など60項目)、街並み委員会でアドバイス(市が事業者に事前に委員会のチェックを受けることを示唆)、問題は全国ネットの事業者の進出、後継不足、シャッター街化、ハイオクの存在など。鹿野(小林氏)からは取り組みが緒に就いたばかりとの報告がなされた。

 後のコンサート開始が迫り時間が限られ、意見交換が充分できなかったが、加悦や川越が挙げた状況は各地共通の課題であることが明らかになった。

 最後に座長で臼杵の斉藤さんから、宮津への助言として、立派な町家だけでなく、普通の町家を直して活用することが市民へのアピールとして有効だとの発言で閉めた。

(作事組全国協議会会長  梶山 秀一郎)


町歩き

商家町
第U分科会
第U分科会には33人の参加者があり、元花街であった新浜地区、漁師町界隈、北前船で栄えた商家町を日向進先生や宮津市の河森氏のご案内で見学しました。港町らしく総二階の町家にはセガイ造りの小屋組も見られ、1階の出格子に腰壁が付き屋内化されていること、2階の窓に庇が付くこと、2枚ホゾの仕事が好まれていることなどが京都の町家との違いでしょうか。幹線道路から一筋入ると昔からの町並みが多く残っています。最後に旧三上家住宅を見学し、そこで意見交換会を行いました。「宮津町家は存在するか」が座長に与えられたテーマです。武藤氏からは、金澤では町家の定義は立地、商い、造築年、工法によってある程度カテゴライズされているお話がありました。京町家も同様ですが、大店と借家、築造時期、用途によって種類にかなりの幅があります。宮津でも、花街も漁師町も商家もひっくるめて宮津町家と呼んで良いのではとの結論になりました。八女の北島氏より、そろそろ町並み保全に向けた制度設計に取り組んではとの指摘がありました。また臼杵の荻野氏からは、三上家の欅材が北前船で運ばれて来た可能性について指摘がありました。

(設計担当理事  末川 協)


桜山長屋

第V分科会
第V分科会
 第V分科会は市内町並み見学の後、桜山ナガヤカフェに隣接するイベントスペースで行われた。間口3間奥行5間の2階5棟が連続する長屋の端から2軒をカフェとイベントスペースに利用している所である。店主の羽田野まどかさんが着物姿で出迎え、解説してくれた。参加人数は約30名。手作りのタタキ土間の上に座長宗田先生と、ゲストスピーカーを円く囲む。テーマは、今、地方創生で話題になっている空家対策についてである。現在我国全体で820万戸にも及ぶ空家問題について全国各地でどう対処すべきか?それに立ち向かうプロジェクトのある所には、常に勇気ある女性がいるとして、この長屋カフェの経営者と共に、大分県で町家を再生し、地域の人々の交流の場として、「くど市」を開催している梶原純子さんが自らの体験を話してくれた。他に、西舞鶴の商店街で空町家を所有者から無料で借り受け、ギャラリー兼店舗に再生した工務店の若社長の試みや、旧加悦町で無住の古民家を持主から解体費を供出してもらって重伝建の助成金をあわせて修理運営を企てる天橋作事組の宮田氏の話等が紹介された。その後参加者全員が意見を述べ合い、分科会は終了した。

 その夜町にでると、通りに何万個ものあかりが灯され、山辺の神社や寺の境内で市民が集いそぞろ歩きをする「和火(やわらび)フェスタ」が催され、久々に生き生きとした町衆と町並みが蘇った感があった。日中宮津の町家はシャッターをおろした店が多いが、各所にしっかりと存続し、再生の機会を待っている印象を覚えた。

 翌日は宮津港より観光船で海から接近する伊根の舟屋めぐりをし、そこからバスで丹後ちりめん街道の旧加悦町の町並み見学をし、とても素晴らしかった。案内していただいた日向進先生や天橋作事組の皆様に感謝する次第です。

(作事組代表理事  木下 龍一)

[釜座町町家活用]

町家をトーク

京都工芸繊維大学建築史グループ

NPO文化芸術国際協会


[斧屋法要]
 10月18日午後2時から、裏寺町の法界寺にて斧屋法要が営まれました。明治20年から続き130回を超えるご町内恒例の行事です。読経のあと住職から講話があり、美しいお花をお供えするためのお参りではなく、一心に生業を全うしていると報告できるように日々精進をと説かれました。お墓にお参りした後、町内会長の長谷川氏から11月16日の明倫自治連合会の防災避難訓練のお知らせがありました。大水にそなえて土嚢の作り方を学んだり、非常食の味を確かめながら危機管理能力を養うという趣旨が説明されました。


桜山長屋
[インドネシアからの見学者]
 10月31日、筑波大学教授上北恭史さんと立命館大学教授吉田友彦さんの案内で、インドネシアの国家教育省やバンダアチェやジョグジャカルタの考古学事務所に勤める文化財保護の専門家が町家の見学に訪れました。
 大下理事から、京町家保全と活用の取り組み事例として、京町家ネットや棟梁塾の活動、釜座町町家再生プロジェクトについてご説明しました。
 多くの方々の長年の努力によって文化遺産としての京町家の認知度が高まってきたなかで、後世に伝えるべき伝統構法の技術を継承する大工の立場から、専門的知識を有する京町家再生研究会、技術者集団である作事組、棟梁塾と改修現場の存在意義が語られました。
 インドネシアでは、材木の調達が難しく、また伝統工法の大工技術を持つ人材が不足していることなどから、木造伝統家屋が地震と津波で壊れたあと、鉄筋コンクリートの建物に置き換えられているそうですが、鉄筋コンクリートの建物より木造のほうが壊れなかったという声もあがり、文化財が失われていく危機感を持って保全活動に取り組むことが肝要という認識で一致しました。

(作事組事務局)

工事実績: 212件
相談件数: 563件
('99年〜'14年10月30日現在累計)