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京町家作事組
第95号(2015年8月)

◎7月の報告

10日(金) 理事会
11日(土) 京町家ネット長屋改修現場見学会
17日(金) 祇園祭 前祭山鉾巡行
24日(金) 祇園祭 後祭山鉾巡行
24日(金) 理事会

◎8月の予定

7日(金) 理事会
9日(日) 豊田みよし地理学会見学来訪
23日(日) 地蔵盆
28日(金) 理事会


長屋の改修事例見学会と意見交換会


改修現場見学会

据え直された延べ石と揚げ前中の柱 

側柱の根継と床組

荒壁をつける

切断されていた母屋の補強

改修方法の意見交換会
 7月11日(土)午後、千本丸太町に近い中務町の町家にて改修工事中見学会が行われ、京町家ネット各会から約30名の方が集まりました。当初から作事組の見積・工法の標準事例として取組むことを目標に掲げてプロジェクトを進めてきた設計担当のクカニア・南麻衣子さんからこれまでの改修プロセスと設計内容の説明がありました。経緯としては、昨年の9月頃、建築主(株)八清のコーディネイター浜田真以子さんから南さんに協働プロジェクトの提案があり、作事組の伝統工法と八清の施工基準をすりあわせる話し合いを重ねて着工にこぎつけたのが今年4月末でした。京町家情報センターの会員であり、広く町家のリノベーションを手掛けてこられた八清さんと作事組の今回のような協働はかつてなく、組織の発足以来十数年を経て初めて実現したものです。現行法に適合しない構造部を含め、必要な時間と手間をかけて元々建っていたオリジナルの姿を復元する計画で、延べ石が割れて沈んでいたのを据えなおし、石の上から柱が滑り落ちない工夫も入れ、足固めは入れず、大引、根太、敷居を取替える床工事をしています。また東側の壁を覆っていた合板を取るとすでに土壁が落ちてほとんどない状態だったので荒壁をつけ直し、西隣とは連棟で壁一枚でつながっている屋根の母屋が切られていたため材で挟んで補強しているということでした。さくあんの萩野さんから土壁と構造用合板とを比較して強度や変形復元性能を総合的にみたときに土壁の優位性が明らかになってきているというお話しがありました。足元が腐った柱は根継が行われ、細い側柱は抜き替えが行われました。見学会で見て頂いたのは構造改修が終わり内装工事中の段階で、半分アルミサッシに置き換えられた虫籠窓もこのあと復元されます。工事完了は9月中旬の予定です。

 見学会終了後、釜座町町家に場所を移して改修方法について話し合いの機会がありました。改修前、入口から足を踏み入れると通り庭の土間が水回りのある離れまできれいにとおっていたのが印象的でしたが、はしりにわの床を上げ、とおりにわのある東側に階段をかけかえることにしたのは、不動産業の目線で現代の暮らしやすさに配慮しつつ火袋をいかすことを考えた結果です。異なるバックグラウンドを持つ者が話し合うことで計画がブラッシュアップされ、作事組の核が明確になるとともに、工務店間の違いを改めて認識する機会にもなったと振り返りました。

 ご参加くださった住まい手の方からは、自宅を改修したときとは思い入れが違うためか、工事中の現場ではなかなか完成イメージがわかなかったが、構造や屋根など最低限の改修を終えた段階で買い手が家をつくる醍醐味を味わえるような体験を織り込む工夫ができれば、京町家の魅力的と思える部分を残し、京町家を生かしたいという思いが新しい住まい手のなかにも育っていくのではないかというご意見をいただきました。

 情報センターの発足から12年たち、5年ほど前から不動産業者が町家を直して売ってきたが、表は京町家の意匠を残しつつ、中はマンションのように住み手の住みやすさのレベルにあわせてリノベーションが行われており、その手法がそろそろ曲がり角にきているのだという指摘が再生研理事・作事組理事からありました。こうした考察を受けて、今年11月21日に予定されている東京での京町家相談会は「京町家の活用とリノベーション」から歩を進め「京町家をいかす」というテーマで再生研の小島理事長がお話しされます。

(作事組事務局 森珠恵)

工事実績: 217件
相談件数: 589件
('99年〜'15年7月30日現在累計)