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京町家作事組

第124号(2019年6月号)

◎町家の日の京町家体験講座 開催報告

2019年3月2日〜3月10日まで、町家の日にあわせて、作事組事務局にて開催した茶話会・町家建築の職人と設計士#第1話〜第6話と、もみじの小路の現場で開催した土壁作り体験会の報告をさせていただきます。 

#第1話「キル・オル・キル」
3/3(日)10:00〜11:30

第1話 キル・オル・キル
板金職 林田憲和
+ 設計士 冨家裕久
 キルオルキルとは:鉄板を切って、折って、水を切ること。
 板金は、大工、左官などに比べて歴史が浅く、圧延技術が確立し、鉄板が普及する明治以降に登場した職種。
 伝統建築のなかでは新しい職種の板金でも、京町家にうまくなじむ意匠になった。とくに京都は、地方の板金と比べて意匠がシンプルで華美にはしません。


#第2話「作事組の仕事 高いの?安いの?」3/3(日)13:00〜14:30

第2話 作事組の仕事

第2話 作事組の仕事 構造改修
大工 大下尚平
+ 設計士 坂爪寛人
 現在、手付かずのままほっておかれた町家が、構造からしっかり直す時期がきています。たとえば居室側側壁が、隣家ハシリの土管配管の水漏れにより沈下していることがあり、押入れの床がブカブカしていれば柱足元が傷んでいるとわかるなど、町家ならではの要所があります。
 出入り大工の仕組みが失われた現在、住み手に改修自体の知恵の蓄積が失われつつあります。改修時期や改修範囲などは、大工手間や工事費と密接な関連性があり、大店と借家では、それぞれ適正な材料や手間があります。そこを「あんじょうして」と言われると、材料を吟味するのに大変気を使うといった、大工の実際の経験がものをいう世界で、昔から引き継がれてきた、町家の作法、工法や町家を維持していく仕組みを大事にすることよって、むだのない改修をしています。


#第3話「町家に似合う家具」3/9(土)10:00〜11:30

第3話 町家に似合う家具
漆芸・木工作家 建田良策
+ 設計士 井澤弘隆
 家作りの前に身近な家具を、例えば身に合う椅子を作ったら、もっと居心地のよい家が作れるのではないか―
 正座しない外国人に喜ばれる椅子、 腰痛持ちの人が楽になった椅子など…作品事例の写真を見ながら、形象と安定感についての思考や、接合部の構造等の解説をしていただきました。
 師匠の黒田辰秋氏から写生を沢山するようにとの教えを受け、自然界の生物の形に製作のヒントを得ることも多く、椅子のほかにも、厨子や棚、弥生時代の遺跡を写した作品もあります。弥生時代に使われていたような桑の大木が今はなく、他の木材を代用するなど、長い年月における木工制作の環境変化を目の当たりにすることもあるそうです。海外の著名な建築家は家具も作っている人がほとんど。
 家具と建築が良い関係を結びますように。


#第4話「瓦の今と昔」3/9(土)13:00〜14:30

第4話 瓦の今と昔
瓦 光本大助(光本瓦店)
+ 設計 梶山秀一郎(まちづくり舎)
 瓦の歴史のなかで、特筆すべき変化は、災害を乗り越える過程で改良が重ねられてきたこと。飛鳥時代に百済から渡ってきた人の瓦が今も元興寺の屋根に一部残り、江戸期にはオランダやフランスの影響を受けながら、世界一水はけのよい和瓦が近江で発明された。
 窯の改良とともに作業効率や品質が向上し、また葺き方も改良されてきた。
 関西の土は、石英や長石の成分が少なく、適した粘土が豊富。
 土が柔らかい沖縄の瓦は釘止めせず、別の職種が漆喰で塗り固めるなど、地域の工法の違いがあり、他地域の職人の応援は難しいことがあるようです。


#第5話「難しくて面白い伝統建築をもっとやろう」3/10(日)10:00〜11:30

第5話 難しくて面白い伝統建築をもっとやろう
板金職 橋爪均(ストロベリーセブン)
+ 設計 内田康博(内田康博建築研究所)
 新しい銅製の樋が町家のファサードに取り付けられたときの水平の輝きは特に目を惹きます。板金の仕事は、やってみたら行くところ行くところ毎回違うことができて、工夫することが性に合っていると面白いけれど、上手くなっていかないと、続けるのが難しいそうです。
 CAD で下図を描いて、薄い金属を加工して、現場で取り付ける。屋内の仕事も結構あるので、段取り次第で雨でも手が止まることはない。
電蝕で腐食がおきて、亜鉛のねじがとけてはずれるといった金属の相性には注意が必要であることや、酸性雨に耐える板金の開発など、洋館の屋根と避雷針のあいだにつける装飾品の現物を見せていただきましたが、なかなかよい値がつくそうです。


#第6話「町家と蔵の作りと役目」3/10(日)10:00〜11:30
左官 萩野哲也(さくあん)
+ 設計 南麻衣子(AtSpace Architects)
 蔵の壁の色は、赤や黒の蔵もあるが、京都の場合ほとんどが白い。
 蔵の中の家財と蔵自体を良い状態で保っていくことは大変難しいですが、壊すのも大変なので、メンテナンス計画を生計に組み込みたいところです。
 蔵の仕事は町家よりさらに機会が少なく、同様に貴重なもの。
 「われわれも蔵のことをもっと勉強せにゃならん」と萩野親方。
 土壁の表面となる中塗り仕上げや漆喰の上塗りは、専門の職人でないとできませんが、町家の土壁の下地作りは、施主様や家づくりに関心のある仲間も参加されることが多く、和気あいあいとしています。いつも熱心にいろんな現場に参加されている丈夫な異業種の先生や、建築専門学校に入学が決まっている男子諸君も、今回お話会ともみじの小路の現場の実践両方に参加してくださいました。
 さくあんの現場では女性も多数活躍中。日本の左官を習いに来ているフランス女性も現場を盛りたててくれています。


#もみじの小路 土壁づくり体験

もみじの小路 土壁作り体験

 もみじの小路改修プロジェクトで、3 月2 日に木舞編みと荒壁付けの体験会を開催し、多数ご参加いただきました。翌日には情報センター主催の「住みたい町家を探しに行こう」にご参加の皆様にもご覧いただきました。入居店舗の募集、計画と並行して、5 棟の大家様による修繕範囲の工事が終盤に差し掛かっています。



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