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町家の手入れの仕方─vol.3

堀内 健(作事組理事) 

町家にふさわしい暮らしとは

●クーラーを付けてはだめですか?

 クーラーを付けては絶対にダメとは言えませんが、「町家は夏を旨とすべし」で造られており、工夫次第で、色々な過ごし方が出来ます。
 襖を「葦戸」や「簾」に替え、打ち水をして冷気を家中通過させるなどで、室温を下げる工夫や、調度品による、視線からの「涼」を得ることもできます。
 1階は風を通せば、暑さを凌げますし、2階は天井裏に断熱材等を入れ、家具の配置で通風を良くする工夫ができます。
ただ昨今、隣接して家屋が建てられ、また裏も敷地一杯まで建てることが多く、中々自然な空気の流通が昔ほどになくなりました。
 人々も「クーラー」の人工的な涼しさを体で覚え、設置する事が多いかと思いますが、なるべく「昼間のみ」として、夜は窓を開け、自然風を通し、壁や木部を乾燥しすぎないようにと、温度変化を緩やかにするのが、町家にも、住人にも大切な事だと思います。
 *室外機の設置場所にも目立たないようにひと工夫を!

●バリアフリーにしたいけれど!
 バリアフリーといっても色々と広い意味もありますが、一般的に「開口部を広くする」・「段差をなくす」・「手摺を付ける」等々があります。
 床の材質の問題ですが、ベッドを置くまでは畳のままで良いのですが、補装具や義足等を付けた場合、床は「コルク材」や「板床」等が良いでしょう。高齢者の場合「畳の上を、くつでは歩けない」といった意識が相当根強く、室内でわざわざ補装具を外されるケースが多く、よっては転倒による2次災害を招きます(畳の上に「簡易硬質敷物」での対処では、端でつまずく事がありますので、感心はしません)。
 町家で寝室スペースは、8割〜9割が奥の座敷が多く、トイレや浴室の導線に近い事が主な理由ですが、外部との距離が遠いのが気になります。
 外部へのアクセスは大事な事ですが、町家は土間と床との段差が40〜50センチほどあり、スロープ掛けとなると最低4〜5m以上の長さになってしまい、扱いやスペース的に不具合が生じます。
 急勾配のスロープより「蹴上げ」の低い、踏み台を数段造る方が安全です(場合によって、電動用具も適用)。
 室内の小段差解消、暖かくする工夫、スイッチの工夫、和式便器から洋式便器に変更と物理的な事も大切ですが、家族が心の視線を合わすのが、一番のバリアフリーではないでしょうか。

●土間に床を張ってDKにしたい。
 昔は汚物等の汲み取り、風呂の炊木の搬入等の事で表から裏まで「土間落ち」でした。
 トイレの水洗化、風呂のガス・電気による自動化により通路としての役目が無くなった昨今では、町家といえども土間を上げている家は少なくはないです。
 しかし、庭の手入れや、商売上荷物の搬入搬出がある場合は、床が外せる(又は丁番を付ける)ように工夫をした方が良いかと思います。
 いずれにしても、天井は張らずに、「吹き抜け」のまま残してほしいと思います。

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