• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
はじめに京町家再生研究会京町家作事組京町家友の会京町家情報センター
町家の手入れの仕方─vol.6

堀内 健(作事組理事) 

便所、浴室を主屋内に設けられませんか。

 昔の便所は「汲み取り式」で、衛生的や臭気の理由で、全て裏庭等の屋外に設けてあり、さらに昔は一住区やロージに「共同便所」の時代がありました。
 昭和30年代以降、水洗化が発展し、また和式便器から洋式便器の移行も昭和50年代以降急速に進み、ますます「便所」から「トイレ」というイメージに変わり、屋外施設から一個室という位置付けになりました。
 水洗化が進むのと同時に、汲み取りの不要で土間落が無くなり、「走り」部分を居間と同レベルまで上げる嵩上床の改修工事が多くなりました。
 また、昭和56年ごろ以降「洗浄便座」も普及し始め、「高価な便器」や多色になり、国内メーカーからもドンドンとアクセサリー類が発売され、デザインも先駆業者の海外メーカーをも凌ぎ、「使用」から「嗜用」になりつつあり、同時に動線の関係もあるのですが、主屋内に計画されることが多くなってきました。
 しかし、町家の形状や間取りからすれば、主屋内に「便所」等を入れ込むのではなく、隣接する形にする方が良く、また外部に面することにより、人工換気ではなく、理想的な「自然換気」が出来、主屋に「臭気」や「湿気」の入り込みを防ぐこともできます。
 また、「水廻り関係」は腐朽の恐れや、設備機器の寿命があり、そうした場合でも「主屋」を傷めることなく、改修工事も簡易に行えます。
 また、配管や排水管などの敷設替えなどのことも踏まえ、点検口などを作っておくと良いでしょう。
 古い町家はトイレの改修では、現状の場所で「洋式化」や居間と同レベルまでの床の嵩上げ工事がほとんどです。
 その場合「わたり廊下」を作って主屋と結んでいますが、庭側などは壁がない状態になっている場合が多く、転落防止として「景観を損なわない」程度の防止対策が必要です。
 また、「足元照明」も一つの工夫です。
(*注意 町家によっては、当初より居間から廊下により嵩上っていた所もあり、俗にいう「下便所」があり、小便器は土間側からと、廊下側に背中合わせに2箇所設置されており、大便器は土間側からと廊下側の2箇所の入り口があり、両方向から使用できた。)

 内装については、町家らしく壁は「漆喰」や「土壁」等を仕様としますが、狭い箇所で動く為、「こすれ」による壁の磨耗を防ぐ為に腰高位までは「板張り」又は類するものを施した方がよいでしょう。
 手摺等設置等も必要ですが、最小限度にとどめ、邪魔にならない様な工夫と「冷たくない材質」、「つかみ易い径」を選定して下さい。
 仕上材等で床材は「木質系」「ビニール系」「タイル系」とありますが、居住者により使い勝手を考慮し、また清掃しやすいもの材質を選ぶのが良いかと思います。
 高価な便器には「自動洗浄」「自動開閉蓋」装置が付いていますが、高齢者には内緒にしておいて、極力自分で処置をしてもらい、「流し忘れ」の場合は自動に洗浄する方法だとボケ防止につながり、後から使用する人に不快感を与えず、また衛生的です。
 2階にも水洗式だと設置できますが、夜間使用などの事も考慮し、排水パイプは「消音パイプ」がお奨めです。
 浴室も「炊き木」による「湯沸し」がガス式・電気式・石油式と火災の安全も考慮された製品が出てきたため、家の裏の片隅で「うす暗く」「怖い」浴室から、「明るく」「楽しい」浴室になってきました。
 家の中で転倒事故は60%が浴室で、「転ばぬ先の〜」で最小限度の手摺設置と入り口床はフラットにする、但し排水処理はキッチリと取ってもらいましょう。また大きさにもよりますが、ドアより「引き戸」がおすすめです。
 ユニットバスの場合、防水関係がキッチリ出来ていますので、屋内はもとより、2階以上にも設置できますが、配管経路は出来るだけ単純な方法をとり、また敷設替が簡単に出来るよう、施工しておくべきだと思います。そして、やはり「湿気」の発生源ですので、出来るだけ外に面した箇所に設置し、天井裏にも空間を作り、通気を取るようにしましょう。しかし町家では、昔ながらの木質を使用して欲しいです。
 最近は「木製浴槽」や木質壁材が多く出てきていますので、雰囲気や香りで楽しむ事が出来ますし、古くなれば、リサイクルでき、廃棄の場合も2次利用ができます。いずれにしても、窓が取れない場合は少し容量の大きい「換気扇」を付け、湿気を十分に取りましょう。
 余裕があれば「浴室換気暖房」も検討し、衣類の乾燥の役目と共に、2時間程付けておくと、カビ等の発生も防げます。
 最近は、部屋全体をシャワー噴射して「壁・床・浴槽」を洗浄して、後に強制乾燥する「浴室内自動洗浄装置」もありますが、洗浄剤で十分に汚れがとれます、注意点は必ず「窓を開けるか、換気扇を回しての掃除」と使用後は防犯に考慮しながら、窓を開放して、十分に換気する事が、長持ちさせる方法です。

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回