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京町家作事組
シリーズ「作事組の仕事」・その9

事務局の仕事を通じて

内田 康博(作事組理事)

9月の末から京町家作事組の事務局代行として事務局の業務に関わることになり、あっというまに2ヶ月が過ぎました。この間、感じたことなどを書かせていただきます。

◎大工さん、職人さんの紹介

作事組の協働のようす
 町家改修を考えておられる方からお電話などでご連絡いただいた際に、初めてお話させていただくのが事務局の役割のひとつです。ホームページからメールで相談いただいた方には、こちらからお電話させていただきます。第一印象が大切と、緊張しながら対応させていただいております。そこで感じることは、みなさん、町家の改修を誰に頼むべきか、予想以上に苦慮されているということです。
 作事組の仕事の多くは、ここ30〜40年の間に「近代的に」改修された町家を元に戻すところから始まります。壁や天井に貼られた合板をはがし、傷んだ設備を取り外し、できる限り伝統的な工法で傷みを補修し、町家の本来の姿をこわさないように配慮しながら現代の生活にあわせて改修をします。そうすることで、築80年から100年以上にもなる町家をさらに50年、100年と維持していくことが可能となり、それが町家の良さや美しさを最も引き出すことにつながると考えるからです。
 しかし、持ち主や住み手がそうしたくても、それに応えてくれる職人さんになかなか出会えないのが現状のようです。ずっとお付き合いのあった大工さんが廃業してしまって、その後来ていただいている大工さんは町家のことはよくわからないらしいというお話もお聞きしました。2階の窓に取り付けられたアルミサッシを外して昔の写真に残っている虫籠窓に戻したいけれども、引き受けてくれないとのお話もありました。また、いつもお願いしている工務店さんに蔵の補修をお願いしたら、蔵は勘弁してほしいといわれた、という例もありました。もちろん作事組では町家に関するあらゆる相談を受ける体制となっていますので、町家は直して使うものと当たりまえに思っていますが、まだまだそれがいきわたらず、思うに任せないことも多いようです。誰もが町家を直してくれる職人さんに出会えるようになれば作事組の役割のひとつを終えることになりますが、作事組に相談する必要がある方がおられる間は、作事組を維持していく必要があると感じています。作事組で改修させていただいている現場の様子を通勤途中に毎日覗いて、しっかり仕事をしていると思って、と言って改修の相談のご連絡をいただけるのは、本当に嬉しい瞬間です。

◎事務局の建物

京町家作事組事務局
 作事組は事務局として町家をお借りしています。作事組で改修させていただいた築110年以上の町家で、伝統な姿を維持し、景観重要建造物に指定され、先日、国の登録有形文化財として答申されました。道路に面してミセ・ミセニワ・コミセと、この部分のみ2階があります。その奥にゲンカン・中庭が並び、さらにザシキ・ハシリニワがあります。中庭を持つため、各部屋に一日のうちに一度は陽が差し、畳に映る格子の陰や、庭に面する障子に差す日差しの移り変わりなどに、日本の伝統建築の一つの典型といえる町家の美しさを感じます。京都の冬の寒さは身にしみて、ガスストーブなども使っていますが、町家の風通しの心地よさは何者にもかえられません。このような町家に共通する美質を感じるなかで、それが失われつつあるのが現在であり、それをなんとか阻止し、当たりまえの、美しく使いがいのある町家を維持していきたいと思わされます。
 理事会での話し合いを具体化する作事組の基軸を担う事務局の仕事の重要性を再認識しつつ、事務局の仕事を通じて感じたことを書かせていただきました。

(2008.1.1)