今回は造園を手がける京都景画の木村孝雄社長と、入社3年目の中村恵子さんにお話を伺います。
――どのようにして造園の道に入られたのですか
――今後どのような方向に進んでいきたいですか 中村 庭をつくる仕事を続けたいですが、親方のようにはなれないと思います。重たい石を運んだり、トラックを運転したりということは自分にできる範囲でやれば何とかなりますが、采配を振り、上に立つ人間としてまずやってみせるということが自分にできるかどうか。まだ見通しはもてませんが、いまの蓄積を活かせる仕事の仕方を模索中です。木村 人による部分もあり、この仕事は何年やればできるというものでもありませんが、中村さんは3年くらいで剪定はけっこう上手にやりますよ。きれいにできるようになれば次はスピードが要求されます。庭の手入れにかけられる予算も限られていますから。トラックの運転は横についていないと危ないです。私らはクレーンのついたトラックを扱っていて、トラックごとひっくり返すような危ないことをたくさん経験していますから、しっかり指導する責任があります。うちには中村さんの前にも女性の職人がいました。5〜6年目で結婚退職して和歌山にいますが、すごくパワフルでよくできる人でした。同業者の夫をうまく操縦して現役で活躍しています。奈良の仕事が多いときなど、和歌山から応援に来てもらうこともあります。この業界まだまだ女性は珍しく、これまで女性の親方に出会ったことはありませんが、女性にとってきついところは彼女のようにパートナーに任せて自分は頭をやればいい。これからは女性の親方も出てくると思います。 ところで『アバター』という映画を御覧になりましたか。3Dの眼鏡をつけるのがいやで平面で観ましたが、現実のものではない植物や風景を描いて、素晴らしい景観を創造しています。こういう作品に刺激を受けながら新しい庭の造形を考えるのも大切なことです。 中村 私も観ましたが、植物が現実より強い光を発していたり、山が宙に浮かんでいる光景が印象的でした。 木村 彫刻作品ではよくありますが、支えるものに鏡面や透明感のあるものを用いれば浮遊感を表現することができます。 ――建築家に知ってほしいこと 木村 坪庭の土をめくると配管が集められていたり、給湯器やエアコン室外機が置かれたり、設備の都合でデザイン変更を余儀なくされることが間々あります。庭を主に考える立場として、そういう状況はもちろん好ましくない。日当たりと雨露なくして樹木は育たないことも知っておいてほしいです。しかしいちばん大切なのはお施主さんの思いです。庭に託された夢、希望、祈りを汲みとることが大切です。 ――好きな庭とその見所を教えてください。 中村 東福寺方丈八相庭が好きです。北庭の苔と石を市松に配したモダンな庭が印象的です。 木村 私の師匠である荒木芳邦と重森三怜の作です。荒木は世界をまたにかけて活躍した作家です。重森は作事組の佐藤嘉一郎さんの師匠にあたる人で、全国の庭を実測調査した歴史に残る巨人です。詳しいことは佐藤さんに聞いてください。 〈聞き手・森珠恵(作事組事務局)〉 ※会社メモ:株式会社京都景画/社員3名 所在地 京都市右京区嵯峨大覚寺門前堂ノ前町22番の113 (2010.3.1) |