―京都畳技術専門学院について 50年以上の歴史があります。高校卒業以上の条件で全国から畳屋の子弟を受け入れています。普通科は2年、研究科は2年弱の課程で、生徒は学院が認める畳店に所属しながら、週に二日、畳製作のほか経営や教養の授業を受けています。2,3年前は15名程いましたが入学者は減ってきています。よっぽど親の援助でもなければ、これから畳店をやっていくのは厳しいですから。毎年11月には学院の競技会が開かれます。各学年の生徒が会場で畳を製作し出来映えを競うのですが、うちでは練習で同じことをやらせて、だめなところは何度もやり直しをさせます。ずいぶん叱りたおしたけど、加藤もこの競技会で優勝するまでになりました。
一般的な京間は六尺三寸に幅が三尺一寸五分ですが、部屋にあわせて畳一枚一枚の寸法を割り出します。畳採寸用の差しは三尺五寸、建具採寸用は三尺と決まっています。差しや待針など近頃はアルミやステンレス製のものもありますが、この竹製の差しはお祖父さんの頃から使っていたものです。私は中学の頃からこれで寸法を取っていました。こうして差し込んで二本つなげれば七尺です。この待針も古くて鋼ですね。頭の部分に丸い穴がありますが、使い方は色々あって、固い床に刺した待針が抜けなくなると、この穴に別の待針を通して引き上げれば楽に抜ける。包丁は京包丁と江戸包丁があって刃の形状が違えば切り方も違うけれど、江戸包丁の方が使いやすい。小定規は手に馴染むように自分で作ります。 ―百年使える畳 得意先や町家の改修現場などから引き上げた畳を倉庫に置いていますが、縁なしの坊主畳から韓国製の畳まで色々あります。かつて畳の需要に対し国内の生産だけでは追いつかず韓国で作らせた時期がありましたが、虫の問題もあるし質がよくないので今は使いません。これは重いけれど、いい床は藁の厚みのわりに軽いです。町家の改修現場などで、機械化される以前の古い手床の畳を見ると、今ではあり得ない良質の材料や職人の技に出会うことがあります。そういうものは百年でも使える。縫い方にも色々と学びたいものがあります。これなんかよく見ると縫い目をみせないように縫ってある。こちらは手縫いの丹波裏です。ムラがないでしょう。今やろうと思っても時間がかかってできないでしょうね。こんな仕事をされると畳屋は商売になりません。 (20107.1) |