（二）

　そら、初めての、辛（しん）どい、辛（しん）どい旅やった。しと月も歩いて、やっとのことで、善財がそのお坊（ぼん）さんを捜しあてると、
「どないしたら、私も偉い人（しと）に成れますにゃろか。」
て、尋（たん）ねた。ほなら、そのお坊（ぼん）さんわ、
「よーお、御座（ござ）ったな。わしも、偉い人（しと）に成って人びとを救おと、修行（しゅぎょー）しとるが、やっと、どないしたら善（え）ーことと悪いことの見分けがつくかがわかったぞ。どんなえーかげん言（ゆ）ーても、お見通（みとー）しじゃ。わしわ、そのことを教（お）せて進（しん）ぜよ。けんど、偉い人（しと）に成るにわ、わしも千度（せんど）、修行（しゅぎょー）せんならん。南の方（ほー）にジザイてゆー国がある。そこのミガてゆー先生（せんせ）やったら、きっと、他のことも、よー知ったはるやろ。」
て、教（お）せてくれはった。
　善財わ、一所懸命（いっしょけんめ）、善（え）ーことと悪いことを見分ける方法（ほーほー）を学んでから、おやかまっさん言（ゆ）ーて、また南への旅に出たんや。


　（三）

　三百里も歩いて歩いて、やっとのことで、その先生（せんせ）を捜しだすと、善財わ、
「どないしたら、私も偉い人（しと）に成れますにゃろか。」
て、尋（たん）ねた。ほな、その先生（せんせ）わ、
「よーおいでなはった。先生（せんせ）も、偉い人（しと）に成って、皆んなに教（お）せたげよと、いろんな言葉を勉強（べんきょー）してんのやけど、やっと、どんな言葉でもわかるよーになったでー。アリさんのお話かて、タンポポの歌かてわかんにゃで。先生（せんせ）わ、それ教（お）せたげよ。そやけど、他のことわ先生（せんせ）もまだ勉強中（べんきょーちゅー）や。そーや、南の方（ほー）に、バラモンてゆー行者（ぎょーじゃ）はんがお居（い）やす。そのお人（しと）に教（お）そわり。」
て、言（ゆ）わはった。
　善財わ、精（せー）だい(26)気張って、言葉てゆー言葉を全部（ぜーんぶ）学ぶと、また旅に出たんや。

つづく

※アンダーラインのある言葉は標準語の吹き出しをご覧下さい。