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京町家作事組



◎第三期京町家棟梁塾たより 10



3月2日座学「漆」建田講師

拭漆の棚 製作:建田良策
 3月2日の座学「漆」では、作事組会員で漆工芸作家の建田良策氏から漆についてのお話をいただきました。漆の歴史は古く、縄文時代から使われていたとのこと。福井県の縄文遺跡からは朱漆塗の櫛が出土し、北海道では9000年前の遺跡から漆の使用例が見つかっています。強力な接着剤としても利用され、日本書紀にはヤマトタケルノミコトが猪を射る矢の矢ジリを漆で接着したことが記述されているそうです。塗料としての漆は湿気を通すことで木の素材を長持ちさせ、漆そのものも紫外線にあてなければいつまでも長持ちし、仕上がりが美しく、手触りもよいことなど、最上の仕上げとして愛されてきました。現在では、塗るのに手間と時間がかかること、ペンキなどに比べて高価であること、紫外線に弱いことなど理由で使われる機会が大幅に減少しています。漆の木も日本ではほとんど育てられず、安価な中国産ばかりになっているとのこと。安い、早いばかりが尊重されていますが、大切にすれば長く使える良いものを見直す必要があるようです。釜座町町家(作事組事務局)のミセ土間に建田氏に製作頂いた拭漆の棚がありますので、御覧頂ければ幸いです。
 3月13日には宇治笠取にある建田講師のアトリエを訪問して「漆塗り実習」を行いました。各自持ち寄った木の素材を「拭漆(ふきうるし)」で仕上げます。本格的な拭漆では最低22工程かかりますが、1日では無理なので木地の調整と漆を塗って拭き取る「摺り」の2工程のみを体験しました。漆は肌に触れるとかぶれることがあるため、取扱には注意が必要です。その為つかう木のヘラ作りも行いました。完成したら漆が固まるまで湿度と温度を保つ室(むろ)に最低2〜3日ほど入れておきます。4月には各自の手元に届く予定です。

 3月16日の座学では「各地の構法」について荒木塾長からお話しいただきました。京呂組、折置組などの基本から、かしき造り、せがい造り、東建て、いぐら造り、合掌造りなど、日本各地で工夫されてきた伝統建築の構法、形式を学びました。農村、町中などの周辺状況や産業形態、地震、大水、積雪、風雨など地域ごとの気候風土、火災に対する対処など、先人の知恵の積み重ねが伝統建築には刻み込まれていることが確認できました。