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京町家作事組



◎第三期京町家棟梁塾たより 12


 5月11日の棟梁塾座学では、梶山理事長より『町家再生の創意と工夫』をテキストに講義がありました。前段に「建築基準法のあゆみ」として、町式目から始まり、市街地建築物法、建築基準法、新耐震設計法の導入、耐震診断促進法、姉歯偽装以降の審査の厳格化までの流れについて話がありました。町家を含む伝統建築に関する限り、「既存不適格」状態を否定的に考えるのか、既得権と考えるのかは、当事者の責任において判断が分かれるところでしょう。


5月15日実習 南禅寺界隈の見学

本願寺の防火水槽

何有荘にて
 15日の実習では、「琵琶湖疏水と南禅寺界隈の別邸群」について、京都工芸繊維大学の矢ケ崎善太郎先生に現地を歩きながら講義をしていただきました。琵琶湖疏水は近世以前から京都の都市計画の目標であったこと、近代に実現した経緯、灌漑・上水・水運などの目的に加えて防火用水としての機能があること、を伺いました。同時代の世界的な視点から動力利用目的を潔く発電利用目的に切り替え、その結果生まれた南禅寺界隈の別邸群の開発や、地形の高低差を利用して水を各々の庭の中に流していく仕組みと作法について、解説がありました。何気なく散策をしていた東山の裾野に、複合的な近代都市計画事業の足跡が数多くあることを教えていただきました。本願寺の防火用水のしくみ、水道橋の補強の方法、柱脚の高さの違いなど、塾生の技術的な興味も膨らみました。
 さらに、別邸群の中をご案内いただき、白河院と並河靖之七宝記念館の見学を行いました。近代の建築家も手がけた数寄屋建築の解説があり、7代目小川治兵衛の作庭が無鄰菴の前後で変わることも、わかりよく教えていただけました。岡崎公園周辺の地形の中に平安期の白河開発の跡があることも伺いました。実際の保存再生に数多く参画されているお屋敷の見学も、まだまだご案内いただきたいところです。


5月18日座学 荒木塾長による講義
 18日の座学では、荒木塾長より「町家の収まりから矩計へ」の1回目の講義がありました。今日京都に残る町家を、明治初期、明治中期から大正初期、大正後半から昭和初期型に至るまで、構造やデザイン、材料の変遷まで詳しく解説いただきました。一口に京町家といわれるストックにも奥行きがあり、その改修実務にも違いが生じ、技術的な視点からは伝統構法の完成に近い時期と型が読み取れます。ディティールの講義では、まず外回りから、次に表門や中門、屋根の造りについて、お話しいただきました。手描きの図集をすべて学び通すことができれば、町家のすべてのプランと矩計が組み立てられるはず。2年度を迎えた塾生の意欲に期待します。

(塾頭 末川協)