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京町家作事組



◎第三期京町家棟梁塾たより 13


 6月の1日の棟梁塾座学では梶山理事長より「町家再生の創意と工夫」をテキストに2回目の講義がありました。大型町家の用途変更の昨今の状況について末川より補足しました。

6月5日遠藤邸見学
 5日の実習では楊梅通りの遠藤邸の見学に伺いました。明治38年に完成した表屋造りの規模の大きい町家です。10年間に渡って準備された普請の覚え書きと、プラン検討の過程、すべての拾い出しと見積もり、現場での変更箇所とその清算書、職人の出面帳が残されています。カラス口で描かれた矩計や床の間書院のアクソメも見られ、プランに中廊下やダムウェターの導入があり、近代建築設計の修練者が参画した跡も見られます。ハシリと風呂以外に近代的な改修は無く、記録と建物がそのまま貴重に残る町家です。築造時の棟梁の孫弟子にあたる大工が晩年までお手入れを続けてこられ、近年まで町家のお出入りが正統に守られてきた町家でもあります。2階に間口3間の12.5畳の間があり、1階の間取で芯ずれが処理され、この座敷の実現が町家新築の最大の目標であったことがわかります。構造材の柱は桧、造作材のほとんどは栂、座敷の壁は築造時からの九条土が残ります。欄間や書院では形式的な装飾は省かれ、材料と仕事の値打ちが大切に造られた町家であることがわかります。町家が大切に残されることとあわせて、普請文書はまだまだ読み解ける興味深い内容も多いと思われます。

6月5日塾長の説明を聞く

6月5日普請の記録を読む


6月15日座学
 6月15日の座学では「洗い・塗装」担当の今江氏より講義がありました。プロによる11種類の「洗い」の手法と、住み手による日常の「手入れ」の方法をまず伺いました。素材や目的、最後の仕上方法によってさまざまに洗い方は変わります。同じ木部の洗いでも樹種によって薬の濃さやササラを変える繊細な奥行きがあります。続けてベンガラの歴史と製造方法の話があり、近年まで京都には神社仏閣に出いりする塗装の専門職があったことを伺いました。柿渋塗りを主とする日本の塗装が幕末に「ペルリ」とともに合成樹脂塗装と出会いところから始まる塗装業の近代化ですが、「エコ」に特化する昨今の材料の話を伺うと、町家の再生には柿渋、ベンガラ、松煙、油で十分事足りるような印象も受けました。

(塾頭 末川協)