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京町家作事組



◎第三期京町家棟梁塾たより 15


 9月7日の棟梁塾座学では桜設計集団の安井昇氏に「木造建築の防耐火性能」について講義を頂きました。新旧の建物での火災の違い、延焼防止のみではなく予防、避難を含め、火災への対応をトータルに考える大切さ、水分を含む限り100度以上にならず、炭化してなお断熱材になる木材の本質的な性能のこと、火災での木造と鉄骨造の建物の崩落の違い、断熱性とは違う蓄熱性、遮熱性を持ち、火災でも爆裂しない土壁の性能など、多くの資料と実験の映像からお話を頂きました。防火のことを考えて設計を始められ10年以上、実験による性能評価の積み重ねが、新しい軒裏や土壁の防火性能基準の実現と同時に、現実の町家再生を後押ししている状況を伺うことが出来ました。東京での準防火地域内での木造の新築物件の紹介もあり、誠実な取り組みが切り開いてきた昨今の成果を知ることが出来ました。


9月11日講演会
 11日には実習に代わり京都工芸繊維大学で、荒木塾長の言葉を綴った「町家棟梁」の出版記念講演会に参加しました。「決まりごと」と呼び慣わされる町家の成立ちの原則、それらを大事なものから順番に身につける大切さを繰り返されました。臨機応変で人によって異なる「手順」、相手があって融通無碍な「心得」の先に、長い年月を見据えて安全、安心、綺麗さを守る「決まりごと」があると言われます。町家の改修や伝統構法を巡り、無数のノウハウがあることは改修実務の上、出端から自明ですが、ディティールの、その場限りの羅列以上のことが棟梁塾では伝えられなくてはならないのでしょう。


9月11日講演会
講演の後には第一期棟梁塾生OB三名との意見交換もありました。町家や古民家の再生では活躍中の若手諸子ですが、ここはまさに「心得」の通り、塾長に軽くいなされていた感があります。棟梁塾の講師でもお世話になり、今回の本の聞き取りを担当された矢ケ崎先生方を交え、懇親会も盛会に終わりました。

 21日の座学では町家の改修に向けた調査、実測、設計の内容について話を行ないました。間取り、矩計とも京都の町家にはモジュールがあり、機械的に出来る実測とそれ以外の作業の注意点、現実の建物の傷みが顕在する検査箇所、一般的な耐用年数が考慮されるべき部分とそうではない部分などの話をしました。提案や設計があるならば、必要な改修、しても良い改修、してはいけない改修の区分けを自律的に行なう目標を伝えました。技術面では建具や階段、水廻り、家具など、人体寸法からの必要寸法を知っていれば応用が聞く旨を伝えました。

(塾頭 末川協)