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京町家作事組



◎第三期京町家棟梁塾たより 16


10月5日座学 荒木塾長による講義
10月5日座学 荒木塾長による講義
 10月5日の棟梁塾座学では、荒木塾長より、町家改修工事の「拾い出しと値入」について講義を頂きました。実際の工事に関わるすべての項目についての説明と、その数量の拾い出し方、単価についての話です。細かい積み上げ方の話もありますし、歩掛で大きく睨む方法もあります。両方が同時にできれば大きな間違いをすることなく金額を出す事ができます。今日では改修に不可欠となった設備についても、最終の取り出しの口数から工事金額を出す方法を教わりました。猛スピードの講義になり、塾生がどこまで理解できましたか。11月の積算、見積もりを実際に行う授業で成果が試されます。これができないと、いつまでたっても人の見積もり頼り、過去の工事金額から想像してしゃべる以上のことができません。
10月19日座学 明治大正の普請帳
10月19日座学 明治大正の普請帳
 19日の座学では、塾長より明治34年と大正11年に新築された町家の内訳書を読み解く講義がありました。それぞれの大工の手間が60銭と3円20銭です。それらを今日の大工手間に当てはめて、町家の新築時の状況をイメージします。 前者は錦小路の大店、人件費換算で今日の1億6千万円の総工事費となり、坪当たりの大工手間は30人にのぼります。高価で良質の木材が使われていることも良くわかります。襖や引き手も大変高価で、今日の一般的な新調の数十倍となっています。町家再生においても残されたものを大切に使わなければならないと、身が引き締まります。一方、瓦の工事金額は総工費の1割から2割、単価も今日と変わらずというところです。
10月29日実習 町家の実測
10月29日実習 町家の実測
 後者も坪当たりの大工手間が18人で立派な普請です。木材の値段も高価ですが、実際の建物に比べ数量が足らず、古材や支給材が使われていたことが読み取れます。1万1千596円36銭の見積もりに対して710円90銭の追加精算もきっちりと工事後に行われています。いずれにせよ、町家が造られていた時代から、手間も材料もしっかり拾い出しが行われていた事が良くわかります。坪幾ら幾らという、いい加減な契約見積もりは、後の時代のものであることがわかります。お手製のディティール集での講義もおまけにありました。
 29日には、町家の実測の実習が、元作事組事務局の大岡邸で行われました。間取は簡単に取れますが、課題は短時間に矩計が取れるかです。十分に手入れが済んでいる町家ですが、これを元に各塾生が設計提案し、1等案を皆で見積もって工事金額を比べるという、実践的な授業が予定されています。

(塾頭 末川協)