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京町家作事組



◎第五期京町家棟梁塾たより 7



棟梁塾座学11瓦

棟梁塾実習6三和土

棟梁塾実習6知恩院土塀見学

04棟梁塾実習7表具
 5月11日の座学は光本先生による瓦の講義でした。平安時代の古文書から建物が瓦によってランク付けされている記述を読み取ることで瓦の歴史に触れられ、土葺き時代の延々と続く土揚げの苦行などは聞いていて恐ろしいほどであり、寺社の巨大な屋根を葺く際に瓦を上げるのは職人さんにとっても恐怖なのだと知りました。桟瓦は和瓦ともいわれ地域色豊かな瓦ですが、一説には江戸時代にオランダからの影響を受けてつくられたというのは興味深いことです。瓦組合の競技会に参加した様子や、平窯を復元して古代瓦を焼く珍しい体験のほか、熊本地震の被害状況を調査した写真を見せていただき、親方の幅広い活動を知ることができました。

 5月22日は、2月に工事中の見学をさせていただいたお宅でミセニワの三和土仕上げ実習でした。萩野先生の指導でまず養生をし、水に溶かしたニガリを砂利と土と石灰に加えてミキサーで練り、ミセニワに土を敷き詰めて、木ごてや金ごてで叩き締める。際の部分では補助的に金槌を使って丁寧に固めていきました。その上に、より質の良い深草砂利を混ぜた上層の施工を重ね、三時間で三畳ほどの土間が仕上げられました。約10名実習に参加しましたが、大工さんの強さが一際目立っていました。実際やってみて土が締まっていく感覚や、仕上がりの柔らかさがよく実感できたという声が聞かれました。午後は知恩寺の土塀を見学しました。壊れている部分の修繕の仕方を比べてみると、手間をかけ、下地、中塗り、上塗り、漆喰と層を重ねるのと、モルタルをさっと塗ってしまうのとでは、経過がはっきり違ってくることが確認できました。

 5月29日は、洛雲堂の藤谷巳壽先生に表具の講義をいただきました。話を聞いてすぐに実践できるというものではありませんが、襖の耐久性を高める裏打ちの紙の質というお話から始まり、襖の構造がわかる見本を見せて頂いて、本襖の優れた性質が理解できました。骨縛り、胴貼り、手当り、蓑貼り、蓑締め、泛(うけ)張りを重ねて空気の層が作られるため調湿効果を持ち、埃を吸着し、部屋の空気が澄みわたる。下張に墨書された紙を使うことにより防虫効果も併せ持ち耐久性が増す。仕上げの京唐紙や引手の見本も豊富にあり、いいことづくめのようですが、本当にいい襖の仕事は何十年に一度しかさせてもらえないそうです。過去の一時期に普及した紙があまり使われなくなり当時の映画のなかでしかみられなくなったり、紙を漉く人がいなくなっていったり、化学糊を使うようになると刷毛もナイロンの使い捨てを使うようになって、刷毛屋さんは姿を消し、年に一度の南禅寺の刷毛供養も形式的なものになっている。そうした時代の流れのなかでも、和紙文化が残っていってほしいから、自分が死んだ後も何年も残る仕事を心がけているということでした。家は人の一生より長く残るということが、質の高い仕事をする支えとなっていることが伺えました。お寺の掛け軸の修理や洗いの仕事も多く手掛けていらっしゃるなか、一文字にネクタイを利用するなど遊び心をもって仕事を楽しんでおられる姿が、塾生の皆さんにも魅力的に映ったようでした。

(作事組事務局 森珠恵)