末川 協(作事組理事)
10年の期間限定を目処に立ち上げられた京町家作事組の活動も今8年目を迎えています。残りの2年間足らずを、今までの作事組の成果をまとめ、次のステップを切るための新しい取り組みに向かう期間とし、今春から次代作事組の検討委員会を開いています。
「町家を守り、つくる」という課題に対しては、日々の改修の実践がその成果に当たります。再生事例の量的な評価もありますし、作事組の会員職方全体が一つ一つの実践の成果と責任を自覚する部分もあります。町家を将来に「作る」取り組みをどのような戦略で展開できるのか。そこに今後の課題が見出されます。 「技を再生し修得する」という課題に対しては、改修の実践で得た技や再生された技が、会員の個人的な技量の枠を超えて広まり、町家再生の現場の中で再び活かされています。『町家再生の技と知恵』『町家再生の創意と工夫』という二つの作法書もまとまっています。しかし資材の流通の課題や工期やコストの枠の中で技術の再生が次善の策に留まっている状況もあります。 |
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「保全再生を普及する」という課題には、京町家ネット全体の活動と力を合わせながら、そして自前でも勉強会や広報、講師派遣や見学受け入れを行ってきました。町家と作事組に理解ある施主との協働という前提の中で、京都に残る数万の町家に対してはたして積極的に働きかけが出来ていたのか。ここでも反省が必要です。一方、一つの再生実践が人や近隣のつながりから次の町家改修を呼び、若い住み手の意識を掘り下げ、京町家ネットの屋台骨となる人びとがその町家の住まい手から現れるような着実な実感もあります。 手入れの必要な一つ一つの町家を前に、現場での地道で確かな実践を守りながら、その先の課題を見通す必要があります。町家の改修が一般化する中で、作事組の目指す改修が必ずしも劇的には広がらない課題。京都全体での取り組みと手をつなぐ課題。日本中での取組みと手をつなぐ課題。次の世代へ活動を引き継いでいく課題。活動を広げ、再生技術の質を担保できる継続的なシステムのためには、会員の自主的な取り組みだけでは賄いきれない部分で事業的なシナリオも必要です。
(2007.9.1) |