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京町家友の会
友の会会員さんのお宅訪問
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第2回京北町・山本邸
文:藤岡 璋光(京町家友の会会員)
写真:福田 健策・山本 剛史( 同 上 )

■京北・山国地区にあって京町家風古民家
山本邸にて
山本邸にて
 天皇家直轄の「杣御料地」として、また筏流しで京都のまちなみをかたちづくる木材供給地であった京北の地にあるお宅を訪問。雑誌「家庭画報」に掲載、NHKテレビ「美の壺」で放映されるお宅を見学出来るとあって訪問前からドキドキ、ワクワク。
 7月31日午前11時京都駅集合。周山行バスに乗って、途中停留所よりも続々京町家友の会会員さんが乗車、ほぼ貸切状態で京北合同庁舎前に到着。山本さんのお迎えを受けてご手配頂いた車に分乗、お家に着きました。車を降りて深呼吸———ウン?空気が違う!と感じ、奥様のお招きで家に一歩踏み込んで、大きくドッシリ構える竈に息を呑み、もう一歩踏み込んだ土間の空間からは三間続きのほの暗い座敷と右手から光が差し込むお庭と低い土塀の外の景色が見え、訪れた誰もが「凄い!」と絶賛。

■古民家再生はご夫妻の家に対する「思い入れ」が創り上げた

山本ご夫妻
 お弁当を頂いて家の中、お庭を拝見。ご当主と奥様にお話をお伺いしました。京北の地に古民家を入手された経緯、10年以上空き家で木々に埋もれたようになっていた家、北側の屋根が雪で崩れた状態、等々当時の写真を見せて頂いた状況から、掃除に掃除を重ね、京都市内で解体される町家を見つけては交渉を重ね改修材を調達される道筋をつけられたのは大変な事だと思いましたが、すらっと細身のしなやかな奥様が話をされると容姿、お話し振りとは違って、ご当主にとっての強力なサポーターであったであろう事が理解できた様な気がしました。土塀の三和土ワークショップによる改修再生についても、また板の間にされているお部屋の床板6回の拭漆についても、現在の色合いと天窓からの光の反射が織り成す素晴らしい空間が形成される事すべてが手間隙掛けたお仕事の結果としての今に繋がっていると感じ入りました。細い桟格子を透かして見える田圃の緑は“陰影の美学”。

■山国隊軍楽のお話と山国神社参拝
 ご当主お話の後は、地域の文化財を守る事として継承される山国隊軍楽について保存会会長の川崎輝男さんからその歴史と今日に至り少子化と新人育成が大変な課題である旨お伺い致しました。今回、川崎様にはウッディー京北への送迎に際しても大変お世話になりました。お話を伺った後、足利家の紋が入る山国神社を参拝しました。神社への行き帰りは稲の緑が美しい田圃の間を「暑い、暑い」と歩きました。皆様ご苦労様でした。


山国神社への道

山国神社

■ウッディー京北
 今回お宅訪問の出入り口とさせていただきました“ウッディー京北”は京北町の拠点として地域の皆様方の活気あふれる支援により運営されていると拝察致しました。お客様も多く建物の表で鮎の塩焼き実演販売、クワガタ、取れたて野菜、メロン等々販売されており今回訪問の会員さんのお土産調達の場となりました。

■今回お宅訪問で感じたこと
 町なかの町家と違う古民家(但し、京町家風の謂われは当初建築時の祇園一力茶屋部材使用や材木の芯材使用、栂材使用により堅牢、材木面取りによる風情あり)はその所在する地域の風景に溶け込み、日本の原風景である山、川、田圃、青い空、白い雲を借景とした低い土塀越しに見る風景と共に我々にこう言っているのではと感じました。「日本の今日の時代の求めに応じた物の考え方を見直すのであればココで1時間位この風景を見て座って御覧なさい」。京都駅に18時30分帰着。市内の雑踏に降り立ちビルの熱気を感じ、爽やかな自然界から喧騒の俗世間に戻ってしまいました。でも、なんとも素晴らしい一日をご提供頂いた山本さんご夫妻に感謝!感謝!