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京町家友の会
友の会会員さんのお宅訪問
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第3回南丹市 園部・美山
文:二松 康(京町家友の会会員)
写真:松村 聡( 同 上 )・南丹市

 9月17日土曜日の朝9時、沖縄付近に近づく台風15号の影響で雨との天気予報を気にしながら、曇り空の下、荷物に折畳み傘を入れて家を出た。京都駅に着き32番嵯峨野線乗り場に行くと山田さんがいつもの笑顔で待っておられ席を取ってあるとのこと。車内へ入ると既にかなり混んでいる中、おなじみのMさん達の4人掛け座席に仲間入り。いつもながらの手回しの良さに感謝でした。満員の列車は定刻9:38発車、途中の嵯峨嵐山で半数の乗客が降りたのに驚きなが、10:25には園部駅に到着しました。改札口で山田さんによる人数確認の後、駅前のバス乗り場へ。南丹市の市長・佐々木稔納氏のお出迎えがあり恐縮したのですが、山田さんの高校時代の同級生で、私たちと同じく京町家友の会会員さんとのことで、総勢21名がずっとお世話になることに。

南丹市立文化博物館にて
南丹市立文化博物館にて
町家工房「息吹」にて
町家工房「息吹」にて
 貸切バスに乗車し点呼確認を行い、先ずは園部城址にある南丹市立文化博物館へ。佐々木市長の歓迎の挨拶の後、学芸員の説明で1階の園部町の歴史や垣内古墳出土品を見学。2階の「写真でふりかえる南丹市写真展」を観た後、隣の天守閣を模した国際交流会館で国民文化祭参加の工芸美術展審査会の様子を覗かせてもらいました。

 再びバスに乗車、1774年築という町家を利用した工房「息吹」へ。この地特有の道路側に切妻が向いている妻入町家で、箱階段を残し古さを活かした形での活用がされていました。NPO京都匠塾として若手工芸家が共同利用しているとのこと。次に近くの宝福寺へ。寺門の瓦に宝暦の文字があり18世紀後半の創建か。膏薬の効能宣伝用の版木があり販売もしていたとのこと。聖徳太子像を祀る太子蔵を特別に開帳していただき、お姿を拝むことができました。

ビロード工場
ビロード工場
 次の見学先は歩いて5分の創業明治20年の日本天鵞絨工業株式会社。五代目の藤本義人社長の案内と説明でビロードの生産機械の変遷と工程全般を見せてもらいました。大正11年完成の工場建屋は木造の長大なもので新旧の織機がずらりと並び歴史を感じさせるものでした。私達の見学のために休日出勤された女工さんが細いワイヤーを素早く入れながらビロードを織り上げる技に驚くと同時に、布には不要なワイヤーを取り除く方法が知りたくなりました。馬の尻尾の毛を横糸にした特殊布ホースヘアーの織機実演も見せていただきました。特別高価なもので耐磨耗性に優れているので和装草履の表に使われるとのこと。ビロードは織り込んだ絹のループを特殊なカッターで一筋毎に切り分けて細いワイヤーを取り除いて完成。その伝統の技の見事さと手間に感心し、本物のビロードの素晴らしい光沢に感動を覚えました。

園部まごころステーション「陽だまり」|美山ふれあい広場「ふらっと美山」
 バスで移動して、次は園部本町へ。仮本陣だったという旅籠「合羽屋」を見学し、向かい側の園部まごころステーション「陽だまり」の広間で昼食となりました。「本陣ちまき」に「陽だまりうどん」等の心尽くしの料理で空腹を満たすとともに、ゆっくり休息。元醤油屋を改装した建物と近所の町家群の見学もしました。

 午後2時半にバスで本町を出発、3時過ぎに道の駅・美山ふれあい広場「ふらっと美山」に到着。女性の皆さんは特産品やお土産の買物に精を出しておられ、牛乳工房のソフトクリームが大人気で品切れが発生する状態でした。

北村「かやぶきの里」
北村「かやぶきの里」
ちいさな藍美術館
ちいさな藍美術館
満開の蕎麦の花
満開の蕎麦の花
 道の駅を出たバスはいよいよ北村の「かやぶきの里」へ。移動途中の車内では松村会長から、ご自身がお住まいのお町内の、祇園祭の浄妙山は別名ビロード山と呼ばれ、ワイヤーの代わりに和紙の極細紙縒りを使ったオールシルクの大きな掛け物があるのだが傷んでいるので現在は公開していないというお話がありました。この頃から空模様が怪しくなり、「かやぶきの里」に到着後雨降りに。ガイド役の美山観光協会・柳生さんが来られた4時には土砂降りの雨となっていました。仕方なくお店の軒先を借り、満開の蕎麦の花を前に「かやぶきの里」を眺めながら概要説明を聞きました。雨が小止みになるのを待って村内の「ちいさな藍美術館」へ。途中で雨足が強くなり舗装の道の表面を流れ落ちる水流の中を入館となりました。藍染め作家・新道弘之館長の説明で独自の藍染め工程「藍シンジゴ」のこと、藍は数ヶ月で肥料にするエコロジーな染料等と教えていただきました。階上の世界中から集められた藍染め資料と作品の数々を鑑賞して退出。バスに戻り薪能見学に向かいました。

鶏のすき焼きで乾杯
鶏のすき焼きで乾杯
 雨のため屋外での薪能は実施できず、会場は美山文化ホールに変更になっていました。公演の最初は小学生と中学生による謡曲演舞で岩舟や鞍馬天狗などが元気に演じられました。狂言「附子」は内容が解り易く滑稽味があり子供の観客からの笑い声が絶えなかったのですが、本番の能「葛城」は山伏と葛城明神のやり取りが長く解り難い為、私には我慢の鑑賞となりました。終了後日帰り組は帰途につかれ、残り8名が宿泊先の送迎バスで鶴が岡の「きぐすりや旅館」に向かいました。全員空腹で風呂より食事を優先。地鶏のすき焼きや鮎の塩焼きに舌鼓を打ち、ビールとF氏持参の清酒で暫し会話を弾ませたのでした。
昔の鯖街道
昔の鯖街道
「厨房ゆるり」にて朝御飯
「厨房ゆるり」にて朝御飯
 翌日18日の朝は清清しい青空。「きぐすりや旅館」と道路をはさんで向かい側に大きなログハウスがあり、その裏手に由良川源流といった素晴らしい環境、宿泊者一同は朝の散策を楽しみました。旅館に戻りモーニングコーヒーをいただい後は、お隣の元村長宅という大きな茅葺き旧家を見学。裏に昔のままの鯖街道が残っていることを知り歴史を実感させられました。「きぐすりや旅館」の古い宿帳には魚商や小間物商の名前が残っているということです。

 9時過ぎになり、宿の送迎バスで朝食場所の「厨房ゆるり」へ。山裾にある茅葺家屋を改装した食事処で、この地方の方言で「ゆるり」と呼ぶ囲炉裏のある部屋があり、裏には水の流れ落ちる素敵な庭が設えてあり感動しました。爽やかな風の流れるゆったりした部屋で、朝食にしては豪華な美山の旬料理に栗御飯そしてデザートと大満足の「厨房ゆるり」滞在でした。

 「厨房ゆるり」に別れを告げた私達は宿の送迎バスで、昨日の薪能の予定場所だった「美山かやぶき美術館」へ。新しい休憩所の壁が種々の仕上げで彩られているところや、郷土資料館の民具と古い機器、美術館の草木染め展示を見学、水車小屋の動きに癒されました。
美山かやぶき美術館
美山かやぶき美術館
郷土資料館
郷土資料館
 12時半に「美山かやぶき美術館」を出て、宿の送迎バスで園部駅へ。13:15発の快速電車で帰途に就きました。

 お世話になった皆様、本当に有難うございました。