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京町家友の会

例会報告 「冬青庵能舞台」

日時 平成26年6月22日(日)16時30分より18時まで
場所 冬青庵能舞台(中京区両替町通夷川下る北小路町)
講師 青木道喜氏 能楽師 観世流シテ方

 まちなかの通りから一歩奥まったところ、住まいの一角にある冬青庵能舞台を訪れました。昭和35年に能楽師 青木祥二郎氏が建てられたもので、12年前、現当主の青木道喜氏が相続されたとき少し改築し、冬青庵と命名されたそうです。四季折々の花が咲く露地、茶室もあり、落ち着いた空間が広がっています。

 青木氏からは、先代が能を始められたいきさつや能舞台のあり方など、さまざまなお話を伺いました。演能ができる舞台は畳の間から数十センチほどの高さであり、通常の能楽堂とは異なり、演者と客席の距離感が近しいなかにも緊張感があります。畳の間におかれた腰掛けに座っていると、舞台から青木氏が語りかける言葉がはっきりと意味を帯びて聞こえてきます。謡や所作を交えながらのお話は迫力がありました。お稽古によって「体で覚えること」や口伝はスパークのように「発火点まで悩んでいるところにアドバイスをしないと効き目がないこと」など、初心者にはもちろん、経験のある方にも興味深いお話だったのではないでしょうか。能面を実際に顔に当てる機会もあり、ちょっとした体験もできました。

 先人が造ったものを大切に引き継いでいきたい、という青木氏の気持ちは、現代町家が抱えている問題と共通しているところがあるようです。かつてはまちなかにこのような空間があり、多くの商人達がたしなみとして、楽しみとして能に親しんでいたことが想像できます。表からは見えないところに豊かな空間が広がっていることこそ、京都まちなかの奥深さであり、価値のあることだと痛感しました。