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京町家友の会

町家改修現場見学会に参加して

 少し秋めいてきた9月7日(日)、まだ町家の町並みが残る上京区の改修現場の見学会に参加しました。

 表屋造りの大きな町家。昭和初期に美容院を営業されるために建てられたそうで、まずは、規模の大きさに圧倒されました。美容室のあった場所は、2階の奥の間。天井の高い広々とした一室で壁は大壁。モダンな造りだったことがうかがわれるそうです。個人的には、通りに面したミセノマでなく、2階の奥の間に店があったことにとても興味をそそられました。髪結い屋さんは情報の集まる場所、と聞きますが、まさに、地域の方たちが情報収集も兼ねて訪れるサロン的な場所だったのかな、と想像が広がります。そんな住まいの歴史を感じながら過ごすことができるのも町家暮らしの醍醐味ではないかと感じました。

 オーナーは30代のご夫婦で、奥さまが少女時代に住んでいらしたご実家を改修してご夫婦のお住まいにされるとのこと。少し前、中京区でご主人の曾祖父の方が大正時代に建てた大きな町家に住み始めた若いご夫婦のお宅の見学をする機会があったのですが、このように、町家が若い住まい手に引き継がれる例が少しずつでも増えていることを知る度に、とても嬉しい気持ちになります。

 私自身、長年の都会のマンション暮らしを経て、その不自然な居心地の悪さから逃れるべく、昨年京都で町家住まいを始めたばかりですが、町家暮らしは決して不便ではないし、むしろ、自然素材で伝統構法により建てられた家は、これからの時代の住まいの理想的なありかただと考えるようになりました。法令の縛りで本来の町家の新築が難しいなか、現在残されている町家が一軒でも多く、未来の住まいとして生かされるように、町家を相続した方が町家暮らしを引き継ぐ例がどんどん増えていってほしいと思います。数年前にあった町家が次々となくなっていく現状を目の当たりにする毎日、伝統軸組木造の建築物や町家暮らしが他に代え難い価値を持つことを、一人でも多くの町家オーナーや相続人の方々に理解してもらい、今回見学したお宅のような改修例が増えていってほしいと切に願う今日この頃です。
〈神澤 典子(友の会会員)〉