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京町家友の会

「信託を活用した 相続・贈与・事業継承 対策」に参加して ―たて糸とよこ糸ー

 我が家の近くにある北野天満宮では、毎月25日には「天神さん」といわれる市が立ちます。その一角に骨董屋さんがたくさん出店されています。最近その中に「オヤッ?」と思うものがあります。それは個人の古いアルバムが売られているのです。少しめくってみると家族写真などが丁寧に貼られています。誰がこのような貴重な家族の記録を手放すのだろうか?と悲しい気分になります。

 家と家族はかけがえのないものです。家にも長い歴史があり家族にも親、祖父母、曾祖父母とつながっていきます。この経(たて)につながる糸があればこそ、今の私があるのです。織物の世界では経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと=よこ糸)と書き、経糸こそが大切なのです。その経糸に緯糸がからみあうことで織物ができあがります。当然ながら経糸が切れてしまうとその織物は織れません。孟子の母が織りかけの機(はた)の経糸を断ち切って息子の挫折を戒めた「孟母断機の教え」はよく御存じのことでしょう。

 ゆえに「経」とは「過去からずっと続いている大切なもの」という意味もあります。「経典」など大切な教えの意味で使われているのです。

 現在の私たちの生活も経糸は過去からつながるたての歴史、緯糸は家族・親戚・知人などのよこのつながりです。最近は友愛とか絆という「よこの言葉」はよく聞かれますが、孝行とか先祖を敬うとか、家を守るとかの「たての言葉」はあまり聞かれません。アルバムを売ってしまうような家は、その経糸が切れてしまったということで、その人たちは根無し草になってあてもなく漂っていることでしょう。

 私が今回この勉強会に参加したのも、子供たちが古い我が家を売り払ってしまうことを危惧したからです。単なる節税ではありません。家の中に親や祖父母の暮らした跡が残っていることの価値は金銭に替えがたい安らぎがあります。子や孫がたて糸意識のない人間になって、根無し草になることの無いようによく言い聞かせ、法律の知識も知ってしっかり家を守っていきたいと思います。

◎9月勉強会(再生研9月例会)
「信託を活用した 相続・贈与・事業継承 対策」
日時:9月13日(土)
場所:京都市景観・まちづくりセンター ワークショップルーム2
講師:竹仲 勲 氏(竹仲会計事務所 税理士)

〈長野 享司(友の会会員)〉