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京町家友の会

掘り出し物市



山田家でおこなわれていた頃の掘り出し物市の様子
◎いきさつ
 平成17年に始めたのは、友の会のみなさんならばよくご存じ、友の会前事務局の山田公子さん。今回、本稿をまとめるにあたりお話を伺いました。

 平成12年に町家を改修、引っ越してくると祖父母の代からあったもの、二世帯分のものなど、いろいろ整理する必要が出てきます。平成17年、普通の町家でいろいろな体験をする「楽町楽家」を企画し、オープンハウスをかねたもよおしをすることになり、このような食器類や着物、帯などを並べて「掘り出し物市」を企画しました。事前にこの企画をお知り合いに話してみたら、同様の悩みを抱えていた方々から多くのものが集まってきました。このときは長野家で「蔵出しフリーマーケット」、堺町画廊で「小さながらくた市」も開催されています。

 古くから住んでいると、役に立つかもしれない、自分では使えないけれども捨てるにはしのびない、というようなものをどこでも抱えているものです。改修をおこなうとなおさらそういうものが増えてきます。このようにおうちや蔵の中でひっそりと眠っていた「もの」が掘り出し物市では提供されます。商品でも古物でも骨董でもない、まさに「掘り出し物」なのです。整理のきっかけになり、役立つ人のところへもらわれていくのです。

 掘り出し物市に訪れる人たちの口コミや取材は、「楽町楽家」のほかの企画の宣伝にもなります。利益を他の企画の資金にすることもできます。ものを提供してくださった方も買った人も主催している山田さんもみなさん幸せになる「三方よし」のもよおしです。

 その後、楽町楽家の一企画として、山田さんのおうちでまとめて開催するようになり、初夏には売れにくい火鉢や着物などを主に扱う「冬の巻」もおこなうようになり、いずれも好評であったことから、年2回の開催が定例となりました。山田さんが企画したのは平成24年まで通算13回にものぼりました。山田さんの企画・運営力には頭が下がります。

 その後、主催が変わり、今では京町家友の会となり、場所も釜座町町家へ引っ越しましたが、掘り出し物市の精神は受け継がれています。開催初日の朝はえらいことになります。おおぜいさんが押しかけて、1時間ほどは争奪戦が繰り広げられます。今回、友の会で開催した二日間ではかなりのものが残ってしまいました。そこで、一週間後、広報にも力を入れて「売り切りセール」をおこなったところ、とてもたくさんの方々が来てくださいました。

◎さまざまな出会い
 ちょっとしたお楽しみをかねて、町家の雰囲気を感じてくださる方、じっくり眺めながら、悩んで、ようやく購入してくださる方、いろいろな方が来られます。山田さんが語ってくださるエピソードはどれもすてきな出会いです。新しくお店を始める方が「助かった」とまとめて買われる例もいくつかあります。ちょうど飲食店をされていた方の倉庫整理で出てきた業務用のさまざまなものを一括購入されたり、売れ残りそうだなあと心配していたハンガーかけなどの大物を喜んでひきとってくださったり。広報の新聞記事を見て、普通ならば目にとまらないような器具がすでに入手困難なものだったらしく、是非それを分けて欲しい、とタクシーでいらした高齢の方もおられたそうです。今回も掲示した灯篭の写真を見て、引き受けてくださる方が現れました。

 「ちょっと見せて下さい」と格子戸を開けられるのは、買い物に来るというよりも町家を訪れてくださるという感じです。「初めて町家に入ってみた」という人もあります。空間の広さと奥行き、落ち着きに驚かれます。今回は、たまたま同じ時間帯に来られた数人が座敷で着物談義をしておられました。釜座町の方がふらりと訪れてくださるとホッとします。「次はいつなさるのですか」「今度は早めに来なくっちゃ」と楽しみにしている方もおられます。

 整理整頓のダメな私はできるだけ買わないようにしていますが、職場の来客用に必要なお茶器やコーヒーセットなどは楽しんで選び、この掘り出し物市でそろえました。浴衣やウールの着物などは「丹羽さんにぴったり」の一言で結局毎回のように連れて帰ってきてしまいます。そうそう、山田さんはとにかくオススメ上手なのです。みなさんにも心当たりがあるのでは?

 何よりも大切なのは、掘り出し物市がきっかけで町家のことで困っている方々が訪ねてくださることです。オープンになっていて入りやすいのでしょう。山田さんがご自宅でされていたときは、おうちを上手に見せる工夫もされていたようです。こうして再生研や作事組のお施主さんになられる方もおられます。

◎「縁」を見る
 ものを介してコミュニケーションが生まれ、人のつながりが広がることこそ、掘り出し物市の醍醐味です。ソーシャルネットワークをはじめ、便利な手段が強要される昨今ですが、ここでは生きたつながりが目の前にあり、展開していきます。山田さんは「『縁』を見る喜び」とおっしゃっておられます。ものの大切さを分かち合う機会が広がって、町家そのものも新しく使ってくれる、住んでくれる人の手元にわたっていくようになればいいなあ、と思いながら、今回は売り切りセールの店番をさせていただきました。ご協力ありがとうございました。

 掘り出し物市
 日時 平成27年1月24日(土)25日(日)11時から16時
 売り切りセール
 日時 平成27年2月2日(日)11時から16時
 場所 いずれも釜座町町家

〈丹羽結花(京町家友の会)〉