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京町家友の会

3月例会「山本家見学会」報告


山本家お庭

 3月8日に、室町で染色製品を扱う「山本仁商店」16代目当主のご自宅を見せて頂きました。1940年頃の戦時下にも関わらず、良材を用いて建てられた「大塀造り」の近代和風建築の町家です。中立売通に沿って高い瓦屋根のある木鎧塀があり、前栽で建物は道から隔てられています。敷地南側の表玄関を中心に、東に応接間、西に控えの間と茶室があり、東側には落葉樹中心の広い庭があります。この季節は薄墨を引いた様な景観ですが、桜や芽吹きの頃、緑陰の濃い頃、紅葉の時期には、さぞや見事な眺めだろうと思いました。この庭に面して、北から格天井の仏間、天井の高い座敷と和室が続き、合わせて30畳位の広さです。14代目の施主様が、自宅で上客をもてなす趣旨で建てられたそうです。


山本家茶室
 雛まつりの時期だったので、お部屋のそこここに年代物の珍しい大小様々のお雛様と、自社製品の和装小物まで、所狭しと飾られていました。また庭で収穫された梅のお酒を、ご当主自ら饗され、茶室では奥様のゆったりしたお手前で、お薄を頂きました。

 今でも建具替えや季節ごとのしつらえ等をご家族総出でされているそうです。家の維持管理は難しい事もあり、景観重要建造物と国・登録有形文化財の指定を受けられています。非公開の個人宅ですが、この洗練された接待空間を「仁風庵」と称して、各種イベントの場に活用され、参加者に開放されています。

 私どもの家はとても山本家のような優雅さはありませんが、職住一体の町家で、大きな柱や梁に守られて暮らしています。が、年々夫婦での維持管理は大変で、ここ何年も建具替えはしていません。仏間と座敷等は元のままですが、居住部分は床暖、ペアガラス窓、椅子生活にしています。以前は良く来客を迎えましたが、最近は控え、家中見せるか、一階だけか、客間だけかで段取りをします。庭の掃除も一度にすると腰が痛くなるので時間をかけ、当日朝まで手水鉢の水を張ったり、落ち葉を拾ったりします。それでも来て下さった方達は喜んでくださるので、迎える側もそうじをする大きな励みになります。山本家の行き届いたおもてなしに接し、頭が下がる思いでした。

〈河崎典子/京町家友の会会員〉