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京町家友の会

町家の通りにわから ―掘り出し物市の報告―



 今年は早々に桜が満開になり、一気に春がおしよせてきたような気がします。古い家のなかは春とはいえひんやりとしていて、既にあたたかくなっている表との温度差に気がつかず、冬のようないでたちでうっかりと外に出てびっくりすることの多い日々です。天気予報ではもうすでに夏日!があるとか。季節の変わるのは年々早くなっているようです。

 まだ寒かった2月の末(2月27、28日)に掘出し物市を開催しました。今回は新聞の告知をしませんでしたので、会員さんをはじめとして釜座町や界隈の方々、通りがかりの方々といつになくのんびりとした風景でした。皆さんのご協力を得て、いつも通りいろんな品物が並びました。食器、お盆、お座布団、お鍋、やかんなどなど、もちろん着物もありました。今年は「ふいご」もでていました。どのようにお使いになっていたのかは謎ですが、古いもので、存在感のあるものでした。宿泊施設をされている方がデイスプレイにされるとお買い上げをいただきました。

 最近の掘り出し物市は「大物」が結構あります。タンスや火鉢です。嫁かくしもでていました(とおりにわ内玄関を入ったところにたてる衝立、目隠し)。大きな物ですので、どうしようかと思うこともあるのですが、またたくまに引き取り手が見つかるのも掘出し物市ならではでしょうか。石灯籠(写真展示)を次の方へというご依頼があったこともありますが、これも行き先が見つかり安心しました。いろんなものが釜座にやってきては、次の使い手に運ばれていきます。ほこりがかぶっていたタンスも奇麗にみがかれ、新しい持ち主の衣装が収まるのでしょう。ライフスタイルも変わり、かつてはあって当たり前と思われていた道具ですが、残念ながら使われなくなっている物は沢山あります。着物もしかり、それを収納するタンスも同様。「お嫁入り道具」も様変わりです。でもそれが大型ゴミとして出されるのではなく掘出し物市を経て、新しい使い手のところで息を吹き返すことになるのです。火鉢が金魚鉢になったり、植木鉢になったりすることは、もうあたりまえになりました。

 「店番」の役得はいろんな方々とのお話です。町家にご興味をお持ちになり訪れる方、ご相談にこられる方、たまたま入ってこられた方、古い物にご興味をお持ちの方、それぞれいろんなお話をされます。博識の方も多く、教えていただくことが沢山あります。着物の「かさね」についても教えてもらいました。美しい紺色の振り袖がきたことがあります。まったく同じものが二枚、よく見ると少し濃淡があったのですが、普通はおそろい二枚と思ってしまいます。濃淡がありますがと並べておりましたら、こられた方がこれは「かさね」といって、2枚をかさねて着るのが正式な礼装だとおっしゃいました。確かに留袖も今は比翼仕立てといって、黒の留袖の衿やすそまわりに白の比翼をつけますが、以前は黒の着物の下に白い着物を着ていました。だんだんと簡略化されて、今の形になっています。紺色の振り袖は薄い色を下に、濃い色を上にかさねるのが正式な着方、美しい着物です。寸法が少し小さいので、体格がよくなったいまだと十三詣りにぴったりかもしれません。お母様の着物、おばあさまの着物、思い出のあるものが沢山ありますが、釜座町を介してまた新しいところで新しい思い出が生まれていくことになるのでしょう

 釜座町は入ると土間があり、そこでの立ち話、奥に入ると畳のお座敷があり、ここではみなが座ってあれこれと話に花が咲きます。着物をさわりながら、庭をながめながら、のんびりといろんな話題がでます。町家の雰囲気は不思議な空間で、来られる方々は本当にいろんなお話を聞かせて下さいます。そこに道具や着物が加わる訳ですからおもしろいことは間違いありません。これが掘出し物市の「店番」の一番の役得かもしれません。

 次はいつ頃になるのかは、まだ未定ですが、またまたおもしろいものがやってくることは間違いありません。乞うご期待です。

<掘出し物市 店番>