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京町家友の会


七五三

七五三 小島 冨佐江(京町家友の会会員)

 気がつくと今年もあとふたつき。肌寒いような朝晩、セーターが恋しい季節を迎える。寒暖の差が大きいほど紅葉はきれいになるそうで、寒い寒いといいながらも、急な冷え込みをちょっとは期待しているようなところがある。春の華やぎとはまた違ったいろどりが京都を美しく飾っていく。
 11月になると有名な神社には着飾った親子連れを見かけることが多くなる。近頃はおまいりに着物を改めてということが少なくなっている中、この七五三のおまいりだけはちょっと違うようで、おしゃれな子どもたちが増えている。女の子は三つと七つ、男の子は五つまいりが大きくなっていくときの節目となる。生まれ育った地で無事に大きく成長していくようにと、その地の神様に詣でる。様々な折に氏神様にはおまいりをするのだが、お宮まいりや七五三は子どもにとって大切な行事であるので、親も子も正装で氏神様にまいる。我が家の娘たちも三つまいり、七つまいりには着物を着せて氏神様に出かけた。小さいながらも着物やぞうり、髪飾りと一人前に準備もし、着付けなどちょっとした騒動だったけれど、写真を見るとそのときの華やいだ気持ちが思い出されて、やっぱりいい風習だなあと思っている。
 子どもが生まれてはじめて着る晴れ着は産着だが、きっと女の子が最初に着物を着たという記憶が残るのはこの三つ参りの晴れ着だろう。我が家の娘たちも七五三の記憶はあるようで、子どもながらにもきれいな衣装はうれしかったのだろうと親は勝手に思っている。三つ身や四つ身、子どもの着物の寸法は成長の度合いで違ってくるだろうけれど、七つまいりまでが子どもの着物、その次の節目である十三まいりは本身裁ちの大人の着物を着ることになっている。普段着物を着ることが少なくなって、特に子どもたちもこんな風なことがなければ、着物を着る機会はほとんど無いので、大切にしたいことである。
 子どもたちの着物姿には、普段は使うことの無くなった「はこせこ」を胸に、腰には「しごき」を結ぶ。「しごき」は振袖のときにも締めたりするが、歩くと風でひらひらとゆれて、子どもの着物にはとてもかわいいものである。「はこせこ」は紙をいれておくもので、古い絵などを見ていると胸元にのぞいているのを見ることがある。でも今は着物を着ても「はこせこ」を持つことはなくなってしまっているので、その形を残しているのは七五三とお嫁さんの晴れ着のときぐらいだろうと思っている。着物を着るといっても、三つまいりのときは小さすぎて帯が結びにくいので、付け帯にするほうが多いと思うが、子どもの付け帯は小物とセットになっていて、そこには必ず「はこせこ」もついているし、バッグやぞうりもおそろいになっている。この季節になるとデパートに七五三の衣装が並ぶが、最近は私たちの子どもの頃とは比べ物にならないような色とりどりの衣装がそろっている。
 子どもたちの七五三にどんなことをしたのかと、写真をもう一度見てみたが、とりたてて何かをしたという記憶はなく、家族で簡単にお祝いをしたような気がする。写真だけは写真屋さんで撮ってもらっているので、台紙のついた記念写真が残っている。最近はデジカメが大流行で、どんな写真も簡単に撮って加工が出来るようになっているが、節目の記念はやはりきちんとした形で残しておきたいと思って、写真屋さんで撮ってもらうようにしている。はじめて紅をさしたくちびるを気にして、とんがらかしているような顔をしているのもなんだかほほえましいし、なれないぞうりをはいて一生懸命ポーズを取っている写真を見ると、こんなに小さかったのにと、いまの成長に驚く。
 折節、世の中のめまぐるしい動きに、つい自分たちの周りのことも省略しがちになっているが、せめて子どもたちの成長にまつわる行事には真剣に向き合っていたいと思う。日々子どもにまつわる悲しい事件が起こっているが、おとなが大切に子どもたちの成長を見守るということをもう一度見直すためにも、このような行事は続けていかなければと思っている。
(2007.11.1)
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