町家スケッチBOOKpage.05

奈良井
中仙道木曽路の宿場町。海抜900mの高さにあり、江戸末期〜明治の建物群が残っている。街道の両側に2階がせり出していて格子の手摺のついた家が連なっている。2階の軒庇の出も深く、特徴的であるが、1階庇が猿頭(さるがしら)と呼ばれる鎧庇(よろいびさし)になっているのが目につく。この鎧庇をチェーンのようなもので吊っているが、これは一説によると、盗人が庇に上がるとチェーンが切れて、ガタンと下に落ちるようにされているのだとか。「奈良井千軒」と言われるほど賑わった宿場なので、盗人も多かったのだろう。
建物は平入りで屋根勾配は緩い。このあたりは冬、積雪は30~40cm程度のサラサラの雪で、屋根の雪下ろしをすることはない。内部は通りにわに面して、左右に部屋があり、奥にいろりがしつらえてある。2階は宿泊客を多く収容するために、階高を確保した本2階となっている。表の格子は、いわゆる「千本格子」である。江戸時代には「檜一本、首一丁」とか「枝一本、腕一本」とか言われ、庶民は檜に手出しは出来なかった。従って、江戸時代の民家には、檜はまず使われていない。外壁部分は殆どが板張りで土塗り壁は少なく、わずかに2階部分で、隣家との境界にある袖壁が、防火の意味もあって漆喰塗りにされているのが目につく程度である。