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京町家友の会



(六)

 ちょっと行ったら、またお屋敷があった。そやけど、こっちのお屋敷わ、普通(ふつー)の木(きー)でできた簡素な物(もん)で、えらいごっついのに、中わ、がらんどやった。ほんで、まん中に若い女(おなご)はんが、ちんまりとしとりだけ坐わって居やはった。
 着物も粗い物(もん)で、道具(どーぐ)てゆーたら、お碗がしとつ前にあるだけやったけど、その女(おなご)はんわ、しぶちんにしてわ、なんや、はんなりして優しそーな、お人(しと)やった。
「どないしたら、わたしも偉い人(しと)に成れますにゃろか。教(お)せとくりゃすか。」
て、善財が聞ーたら、女(おなご)はんわ、こー答えはった。
「よー、おいでとくなはったあて、お人(しと)さんに何んでもかんでも施(ほど)こすこと、できんの。お着物(べべ)かて、お銭(ぜぜ)かて、お道具(どーぐ)かて、あての持ってる物(もん)やったら何でも人(しと)にあげた。最後にしとつ残ったんが、この小分(しょーびん)なお碗なんやけど、装(よそ)ーたら、中から何んぼでも、お粥(かい)さんが出てくるさかい、百人、千人たらや無(の)ーて、世界中(せかいじゅー)のお人(しと)らに食べ物(もん)、差しあげることかてできんねん。あて、世界中(せかいじゅー)のお子たちが、お腹(なか)すかして死んでしまわいでもえーよーにしたげたい、思ーてんのえ。」
 善財わ、こないして、いじましーせんと、皆んなに分けたげることを、一所懸命(いっしょけんめ)に学んだ。ほんで、
「おうち、マンゾク王(おー)さんに会(お)ーてみやーらしまへんか。」
て、言われたんや。                                   つづく

※アンダーラインのある言葉は標準語の吹き出しをご覧下さい。