（十）

　善財わ、まだまだ余計（よーけ）の人（しと）に会（お）ーた。余計（よーけ）のことを学んだ。そんでまた南え南えと旅を続けたんや。
　あるときわ、大（おー）きな川の端で、砂遊びしてるぼんぼんに会（お）ーた。その子（こー）は、川の全部の砂粒の数を数えることができたんや。そこで善財わ、その子（こー）から、ふしぎな算数（さんすー）を教（お）せてもろた。
　また、あるときわ、おばーさんに会（お）ーた。昔のことわ、全部覚えてて、何（な）んも忘れへん方法（ほーほー）を教（お）せてくれはった。
　仰山（ぎょーさん）のお金持ちにも会（お）ーた。どんな欲しー物（もん）でも、空から降らせる方法（ほーほー）を教（お）せてくれはった人（しと）。反対に、自分に少（ちょぼ）っとの物（もん）しか無（の）ーても、いっつも十分（じゅーぶん）に満足した気（きー）でいられる方法（ほーほー）を教（お）せてくれはった人（しと）。どんな病気（びょーき）でも治せる薬の作り方を教（お）せてくれはった人（しと）。どんな悩みを持ち憂（ゆー）うつな人（しと）でも、いっぺんに、ゆったりした、えー気持に、幸せにしてしまう香水（こーすい）の作り方を教（お）せてくれはった人（しと）。
　ある王（おー）さんからわ、不幸せな人（しと）、貧しー人（しと）をいとしーに思い、心から愛したげる、慈しみの心を学んだ。
　仰山（ぎょーさん）の、夜空の女神はんにも会（お）ーた。人（しと）びとが、夜空を見上げるとき、その日（ひー）、善（え）ーことをした人（しと）にわ、安らかな心を、悪いことをした人（しと）にわ、慈しみ悲しむ心を起させることを学んだ。また、一所懸命（いっしょけんめ）、行（おこ）ないを正しゅーして、晩にわ、光あふれるきれーな国ぐにや、人（しと）びとの夢、見ることを学んだ。
　善財が、先繰（せんぐ）り先繰（せんぐ）り会（お）ーた人（しと）わ、とーとー全部で五十（ごじゅー）人にもなった。ほんで、五十（ごじゅー）番目の女神はんわ、
　「この道、南え行って、弥勒菩薩はんに会わはりよし。」
て、言わはったんや。

つづく

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