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京町家友の会



(四)

  やっとのことでバラモンをさがしだしたとき、かれは苦(くる)しい行(ぎょう)の最中(さいちゅう)でした。かたな、などの、はものでできた高(たか)い山(やま)の上(うえ)から、燃(も)える火(ひ)の海(うみ)へ飛(と)びこもうとしていたのです。
「どうしたら、りっぱな人(ひと)になれるでしょうか。」
 と、たずねますと、バラモンはいいました。
「ちょうど良(よ)いとことへきた。おまえさんも、この、はものの山(やま)に登(のぼ)って、火(ひ)の海(うみ)に飛(と)びこむがいい。」
 ぜんざいは、びっくりしてこう考(かんが)えました。
「りっぱな人(ひと)になることは、むつかしい。これは、きっと悪魔(あくま)が、わたしのじゃまをして、殺(ころ)そうとしているんだ。」
 すると、大空(おおぞら)から、たくさんの天女(てんにょ)が、口(くち)をそろえていいました。
「悪魔(あくま)なんかじゃありません。あなたはきっと、こわがっているんだわ。」
 ぜんざいは、はずかしくなって、バラモンにおわびをし、りっぱな人(ひと)になりたい一心(いっしん)で、はものの山(やま)から、火(ひ)の海(うみ)へとびこみました。
 するとどうでしょう。ちっとも熱(あつ)くありません。なんだかいいきもちです。
 バラモンは、いいました。
「ぜんざいよ。おまえさんは勇気(ゆうき)と、一心(いっしん)に思(おも)いをこめたときの強(つよ)さを学(まな)んだ。おれにはもう教(おし)えることなんかなくなった。南(みなみ)へ行(い)って、ミタラという女(おんな)の子(こ)に会(あ)いなさい。」


 (五)

「女(おんな)の子(こ)なんかに会(あ)って、なんになるのかな。」
 と、思(おも)いながら南(みなみ)へ行(い)くと、大(おお)きな宮殿(きゅうでん)がありました。みると宮殿(きゅうでん)には宝石(ほうせき)が、ちりばめてあって、数(かぞ)えきれないほどたくさんの、むかしの、りっぱな人(ひと)の絵(え)がありました。ミタラはそこのお姫(ひめ)さまでした。
「どうしたら、りっぱな人(ひと)になれるでしょうか。」
 と、たずねると、お姫(ひめ)さまはいいました。
「ねえ見(み)て、この絵(え)。わたしったら、なん回(かい)もなん回(かい)も、生(う)まれかわって、この人(ひと)たちみんなに会(あ)ってきたのよ。そうして、いっしょうけんめい練習(れんしゅう)したわ。あならにも教(おし)えてあげるわね。」
 ミタラ姫(ひめ)が教(おし)えてくれたのは、いろんなじゅもんでした。頭(あたま)がよくなるじゅもん。だれの考(かんが)えていることでも、わかってしまうじゅもん。病気をなおすじゅもん。おぼれている人を助けるじゅもん。とうめい人間になるじゅもん。どんな願(ねが)いでも、かなえるじゅもん。ただ、ムニャムニャムニャーというだけでいいのです。世界(せかい)をほろぼすじゅもんなんて、こわーいのも、あるんですよ。
「でも、ほんとうに、りっぱな人(ひと)になるまでは使(つか)っちゃだめよ。ずっと南(みなみ)に住(す)んでるジザっていうお姉(ねえ)さんにも会(あ)っていきなさいね。」
 って、最後(さいご)にお姫(ひめ)さまは、いいました。