![]() 文:波多野美智世 京町家友の会会員 写真:奥村一弘 京町家友の会会員 ●比良山の懐に建つ庵 ![]() 東籬庵 全景
まずは、この庵の施主であり平成16年から4年間この家にお住まいになられていた、京町家友の会会員の田上三郎さんと、施工主伊東さんのお二人からお話を聞くことに。 それに先立ち「東籬庵」という庵の名前の由来について田上さんにお聞きすると、陶淵明の「采菊東籬下 悠然見南山」〔庵の東の籬(まがき)の傍らに咲いている一枝の菊を采ろうとすると眼前に名峰の南山が悠然とそびえている〕という漢詩から命名されたとのこと。籬とは竹や柴で荒く編んで作られた垣のことですが、当初は西側に竹藪があったそうです。雄大な比良山地の景色と共に、自然の木々に守られるように建つ庵の名前は忘れがたいものとなりました。 ●伝統的な石場建て構法による ![]() 煙出しの窓を開け、風を通す田上さん
「石場建て構法」という150年以前の江戸時代までの構法を取り入れたもので、現地で出てきた石を掘り返して集めそれらを基礎にし、筋違は使わず木組みのみに挑戦。荷重が均等に収まり傾かないように木組みを造り、自然の石の凹凸に合わせて加工した柱をその石の上に真直ぐに下ろして立てるという方法。建物全体の木組みの計算は8年前の当時は大変難しく、大黒柱に差し付ける17本の梁は勘で差されたとのことでした。中世から近世にかけての社寺仏閣の建造物のほとんどがこの「石場建て構法」によるもので、地震や大風にも耐えてきた力強さがあり、日本特有の風土の理にかなったものであること。 ![]() 家を語る田上さん(左)と伊東さん(右)
●素材を味わう昼食と自然を楽しむ ![]() おくどさんのご飯とおばんざいの昼食
食後は皆さん家の中や外のテラスに出てそれぞれの風景を楽しまれている様子。会長含む3人の男性方は、歩いて数分の所にある天然温泉施設「比良トピア」に行かれることに。残った全員は再び座り直しコーヒーを飲みながら、田上さんを囲んでの話に花が咲きました。ヒグラシの鳴く中、伊東さん達にお礼を告げ庵を後にしました。 自然と共に生きてきたはずの日本人。人の繋がりを大切にしてきたはずの日本人。 今一度立ち止まって足元を見つめなおす必要があることを「東籬庵」は教えてくれたようでした。 |