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京町家再生研究会
大谷孝彦

町家再生 −町家の本質を理解した活用とデザイン 
 最近町家を改装した店舗が随分と多くなりました。その内容は様々です。外観はほぼそのままで内部を改装したもの、外観にも手をいれたもの、内部の改装も比較的元の様子を残しているものから、洋風に改装してほとんど元の姿を止めないものまでいいろあります。歴史的な建物である町家ではあるが、昔のままに残していくこともなかなかに難しい。多少の様変わりがあっても町家が残って行くことは嬉しいことです。

 元々町家は職と住が共存する建物であり、町家が存続していくためには町家を有効に活用し維持していくための資金収入を得ることが必要です。伝統産業といわれた職業が今は従来のように活況でない。なにか新しい活用の仕方を考えなければならない。町家を大切に思う人達によってどんどん具体的な再生活用が展開されるのは喜ばしいことです。  ただ、ここで少しだけ気になることがあります。改装店舗の中身に少々偏りがあるような気がするからです。京都府立大学の宗田研究室で纏められた改装店舗の資料によると、京都中心部の主だった改装店舗103件のうち飲食に係わる店舗が82件と圧倒的に多い。そのうち菓子、漬け物などを販売する店舗が6件、他の76件がレストラン、居酒屋、おばんざい屋、その他の料理屋、喫茶店等です。伝統的な木造建築の雰囲気の中で食事を楽しむことはすばらしいことですが、とはいいながら京都の町中に展開する飲食店の数にも限度があると思われます。ギャラリー、博物館、花屋さん、木工や紙などの小物屋さんなどの再生例もあります。今後さらにバラエティのある町家活用の出現を望むところです。

 また、これらの店舗町家にはその一部に住まいを残しているものもありますが、多くは店舗だけの建物となっています。本来の町家には居住があり、京都の都心としても人々が住みついているという生き生きとした環境が望まれます。町家に住まいながら仕事ができる、商売ができる。町家本来の職住共存ができないものでしょうか。コンピュータが進歩し高度の情報社会となった今、仕事の場は小規模のスペースで高密度の情報を扱うことも可能です。都心町家の活用の方法についてさらに研究を重ねていきたいと思います。

 今一つは、町家の改装のデザイン、手法についても伝統的木造建築としての京町家との係わりをもう少し明確に意識しておく必要性があるのではないでしょうか。残すものと、新しくするもの、その調和、あるいはその対比。京都の町家には本来あったと思われるめりはり、けじめの感性は、少々形は変わっても京都らしさの根本として大切にしていきたいものです。町家に備わっている本質的なものを十分に認識し、理解し、そのうえで新たに創造を展開するという姿勢が必要ではないかと思います。このニュースレターでも再生町家の紹介が連載されますのでご期待ください。