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京町家再生研究会

京町家親子体験教室

 かねてからの懸案事項であった、こどもの町家体験がようやく実現した。こどもたちと一緒に町家について体験出来るような機会がないものだろうかと折りに触れ、幹事会で話をしていたことが7月の祇園祭からスタートした。真夏から真冬ま で、7回の体験を小学生と親御さんに体験してもらう企画である。どのようなことにこどもたちの興味があるのだろうかと、てさぐりながら以下のプログラムを作ってみた。

7月   京町家の話 祇園祭のしつらえと普段と違う町の様子を見る
8月   お掃除体験 町家の掃除(雑巾がけ、土間を洗うなど)
9月   ベンガラ塗り体験 京町家の外観を学びながら、ベンガラ塗りを体験
10月 土壁塗り体験 京町家の構造を学びながら土壁塗りに挑戦
11月 炭起こし体験 火鉢やてあぶりで炭のあたたかさを感じる
12月 障子のはりかえ体験 建具の種類を見ることと障子を貼ることを体験
1月   掛け軸を扱う 町家のお座敷の大切なしつらえを体験する。
現在第二回目のお掃除体験がすんだところ。

 

 初日、7月15日は祇園祭の真っ最中。お祭のためのお花、 屏風、段通(だんつう・藍染めの木綿の敷物)などの説明を しながら、お座敷でお客さんとしての初体験をしてもらった。 こちらが一方的に話を進めたせいか、緊張のためか少し言葉 少なめで体験会をスタート、今後の子どもたちの反応に期待大である。
 記録的な猛暑であった8月5日、こどもたちと網代、籐 筵の雑巾がけをした。暑い暑い日ざかり、動くのもおっくうになるほどの高温のさなか、まずはタオルが雑巾になる過程 の説明から始める。手ぬぐいは古くなったら雑巾に縫うこと、布類を最後まで使い切ること、絹の着物も着物から長襦袢、 お布団、ハタキへと次々姿を変えて最後まで使われていたこと等、「しまつ」「もったいない」という考え方についてのお話をした。暑い日だったので、水をさわることが気持ちよく、終わってから感想を子どもたちに聞くと「楽しかった!」という反応。掃除が楽しいという、これが毎日だったら、真冬だったらどうかなあと思いながらも、うれしい感想でよかった。

 たった2回の体験であるが、こどもたちの素直な反応に力をもらっている。町家は住みにくい、維持が大変、普段はどちらかというと否定的な話がまず先にくるのだが、こどもたちは「きれい」「たのしい」「涼しい」などなど、こちらの心配をよそにうれしい反応を示してくれる。
 次は町家の壁や格子を触る。普段は見えていても「触ってはいけません!」と言われることが多いが、この体験会ではいろんな物を触ったり扱ったりしてもらう。どのように壁が出来上がっていくのか、格子の色はどんなふうにつけるのか、きっと初めての体験になるだろう。土壁、べんがら体験では、手間も時間もかかる作業が町家にはたくさんあることのとっかかりを感じてもらえたらうれしいのだが、さてどのような感想がきこえてくるのか、楽しみにしている。
 私たちがこの体験会で目的としていることは、本当の物を触ってもらう、感じてもらうということ、言い換えれば、きれいなものを見てもらいたいということにもなる。京都の住まい方の感覚は言葉ではなかなか表現ができない。それを家の中にはいること、物を扱うこと、触れることで感じてもらいたい。そこから京都の住まい方の基本を体で覚えてほしいと思っている。一朝一夕では出来ないと思われるかもしれないが、子どもたちは鋭い感性をもっている。だから最初に見るもの、触れるものは良いもの、本当のものでないとその感性がにぶってしまうことになるだろう。こちらも緊張することではあるが、その最初のきっかけとなる体験を大切に進めたいと思っている。
 京都市の友好姉妹都市ボストンにはチルドレンミュージアムがあり、その建物の中には京都から運ばれた町家が建っている。ボストンのこどもたちはその町家で日本の住まい、住まい方を学ぶ機会がある。もちろん入場料を払えば誰でも入れる。京都にもこのような町家があれば、たくさんのこどもたちが京都の暮らしをもっと身近に感じてくれるようになるのではと思っている。



<小島富佐江(京町家再生研究会)>

2018.9.1