• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
京町家再生研究会

「ストックを活かした都市再生」の活動を全国へ

  私たちの「京町家再生研究会」は、平成4年の発足以来活動を積み重ねて10年が経過し、昨秋には特定非営利活動法人の認証を受けました。この5月10日には法人登記後初めての総会が開催され、今後の活動の広がりについて協議が行なわれます。
 当会を中心に、「京町家作事組」「京町家友の会」「京町家情報センター」の4つの市民活動組織で構成する『京町家ネット』のネットワークの取組みも、徐々にではありますが着実な成果を上げています。「京町家を大切な文化資産として保全・再生していく」という理念を共有して、それぞれの特徴を活かした主体的な活動を行ないながらお互いを有機的に支え合って、理念の実践を深化させています。こうした兄弟ネットワークの推進によって活動が市民社会に根付いていくという新しい組織形態が注目されています。これは、当会が設立当初から主題として位置付けてきた実践的研究の積み重ねが生み出したひとつの成果と言えます。今後は、きわめて難しい課題ですが、改修工事基金の設立やコミュニティーバンクによる改修資金金融支援の組織を立ち上げることによって、この兄弟ネットワークは更に強化充実されることでしょう。
 市民活動におけるネットワークの構築には、前述したような共有理念による兄弟組織の結びつきの他に、地域における他のまちづくり市民組織との連携が必用です。「古材バンクの会」「関西木造住文化研究会」「町家倶楽部」等とのネットワークの推進については種々試みられていますが、成果をあげるに至っていないのが現状です。しかし、今後も地域のネットワークの推進については、第三セクターの「京都市景観・まちづくりセンター」や職能団体である「京都府建築士会」「京都府建築工業協同組合」の中で京町家再生に関心の深い会員、組合員の皆さんを含めて、努力を惜しむことなく機会を見つけて協働の試みを続けていかなければなりません。
 また、全国各地で町家の保存再生に活躍する市民活動組織とも連携して、より広範なネットワークを作り上げ、交流と相互啓発とを通じて、ストックを生かした持続可能で人にやさしく、地域の歴史と文化に誇りを持って住み続けることが出来るまちづくりに積極的に参画していきたいと思います。
 当会では、法人化を契機に活動の幅を一層広げ、志を共有する全国の仲間との協働を目指して、この4月から『全国町並み保存連盟』(本年 6 月には特定非営利活動法人になります)に加盟することになりました。
 『全国町並み保存連盟』は、伝統的な町並みの保存・活用や歴史を生かしたまちづくりに取組んでいる全国の住民団体と支援する個人会員で構成される市民活動団体です。1974年に「妻籠を愛する会」「今井町を保存する会」「有松まちづくりの会」が集まって誕生しました。住民運動の最初の全国組織として創立以来30年を迎えますが、町並みの保存・活用を通じた独自の文化運動を続けています。現在の加盟者数は北は小樽から南は沖縄・竹富島まで70余団体、全国の個人会員400余名で、昨今の社会情勢を反映して会員は増加傾向にあり、その動向が全国から注目されています。
 1978年からは、住民が中心となって運営し、研究者や専門家、行政が協力支援する「全国町並みゼミ」を毎年開催し、各地の町並み保存運動や歴史を生かしたまちづくりを検証し、全国の仲間が親しく交流しています。最近では伝統的町並みの保存だけではなく、各地に残る町家を保全・活用した新たな町並み保存、近代化遺産や登録文化財を活かしたまちづくりなど、各地での多彩な取組みが紹介され、それぞれの団体の今後の活動に貴重な示唆を与えています。
 1990(平成2)年には「町並みはんなり歴史都市」をテーマに第13回の全国ゼミが京都で行なわれ、全国の仲間が集まりました。私は20年来の個人会員で現在常任理事をしていますが、石本幸良さん(今年設立されたNPO法人「都心界隈まちづくりネット」事務局長)とゼミ実行委員会の事務局を担当しました。
 今年の全国ゼミは9月に橿原市の今井町で行なわれますが、「町並み守る制度」という分科会を当会が主催することになっています。また「空き家対策」分科会では京町家情報センターがパネラーになります。このように、全国の市民活動団体と交流を重ねることによって、我々の課題である「ストックを活かした都市再生」の研究・実践を深めていきます。


<京極迪宏(京町家再生研究会)>


2019.3.1