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京町家再生研究会

大谷孝彦

NPOの役割と京町家
 京町家再生研究会は設立以来10年を経過し、昨年11月に特定非営利活動法人の認証を得ました。特定非営利活動法人とはいわゆるNPO(Non Profit Organization)法人と言われるものです。今、全国で多くのNPO法人が活動を始めています。根拠となる法律は「特定非営利活動促進法」であり、「特定非営利活動」とは「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」を言います。そして、任意団体では代表の個人名でしか行えない法律行為を団体名で行うことができることになりますが、その結果として、行政からの事業委託などが請け易くなるなどが実質的なメリットと言えます。法の第1条目的の条文の中に「市民が行う自由な社会貢献活動」とありますが、本質的にはNPO活動が地域に根付いた、市民の主体性のある活動であることに大変重要な意味があると思います。実際のところ、まだ日本では活動の実績も少なく、本格的な活動展開はまだまだこれからという状況ですが、諸外国ではNPOの活動が大変活発で、行政の大々的な支援も得て大きな成果をあげています。再生研の4月例会でニューヨークにおける事例を参考にしながら、NPO活動について立命館大学のリム・ボン教授にお話をして頂くことになっています。再生研は今後、作事組、友の会、情報センターとのネットワークによって、「町家再生によるまちづくり」に対して、前向きなNPO活動を展開していきたいと思います。そのためには、会員の皆様の積極的な参加が是非とも必要であると強く感じています。
 そこで、今回は「再生研は今」ということで、当会が取組んでいる活動を改めてご紹介してみたいと思います。
○くらしの研究活動:「京町家歳事記」としてこの一年間、月に一度の形で京町家のくらしの体験をする試みを続けて来ましたが、来年度は友の会と連係して、より充実した内容で継続します。
○再生企画活動:今年度は町中に残る作り醤油屋さんの作業場とお店の改修の企画設計を実践しました。今後もまた、研究的に係われる事例があれば取り組んでみたいと思います。
○町家、町並み防災技術研究:伝統的な町家、町並みの防災性能の調査、研究を神戸大学都市安全研究センターの室赴ウ授(当会幹事)の研究室と共に進めています。建物調査、ヒアリングを行い、防火、避難などに関する伝統的建物の工夫、くらしの意識を調べています。
○「都市再生プロジェクト」への取組み:経済活性化を目標とした国の「都市再生」の施策において、ストック活用型の都市再生として町家にも焦点が当てられ、当会にも調査事業に関する委託が来ています。国と地方が揃った場において、伝統的木造建築である町家の正しい評価を前提とした前向きな検討が進められるものと期待しています。
○交流活動:
・「建築士と施工者の交流会」は、町家再生に関して設計と施工の連携は双方にとって大切な課題であり、再生研はコーディネーターとして来年度もまた、新たな企画の下にこの課題に取り組んで行きます。
・この4月から「全国町並み保存連盟」に参加が決定し、他の歴史的な町並み保存再生活動を行っている全国の市民活動組織との連携、交流を図ります。
・ドイツの歴史的産業施設の再生活動を行っている専門家を招き、京都ドイツ文化センターとの共催で、4月中旬、シンポジウムを行います。町家再生活動の状況を発表し、再生についての国際的な意見交換と交流を図ります。
○お訪ね相談の実行:今年度スタートしたお訪ね相談を改めて本格的に実行します。それぞれの町家の悩みごとを受け付けて、訪問相談に応じます。お訪ねすることによって町家建物、くらしに触れるよい機会ができると思います。
○その他、毎月の例会開催、ニュースレター、ホームページによる情報発信を行っています。
 再生研は今、会員の皆様の企画、実行サイドへの強力な参加を期待しています。

2003.5.1